”一度きりでいい・・・”

それは守れないことわかっていて・・・









midnight ・・・・・・Blue moon










見つめあった瞳がぎこちなく逸らされた時
と俺の距離が、もう引き返せないくらい近づいたのだと思った。

ふたりはじめてのキス・・・

どのくらい強くこの瞬間を待ち望んでいたのか
魂の震えを止めることが出来ない。



(夜明けよ どうか今日だけは・・・)


君があいつの事を思い出す暇もないように、次々にキスをして
俺の背中に回された手が力を失って滑り落ちた。



(もしこんな俺を哀れと思う心あるならば・・・)


服を脱がせ、露になった肌に舌を這わせた


月光に照らされる白い双丘の頂を口に含んで舌を絡める。
「・・・んっ・・・」
固くしこってきたところを吸い上げて・・・
「や、ぁ・・・っ・・・ぁん・・・」
頭を左右に振って横顔をシーツに押し付ける。
俺はの美しい身体と、さらなる快感へ導くことに夢中になった。


(時の狭間へこの部屋ごと飛ばして・・・)

の悶える姿を記憶に刻みながら下腹部へ手を下ろす。
下着越しに感じる快感の証。
なぞりあげて突起にあたる部分を指で軽く圧迫した。
もう堪えきれないくらい感じているはずなのに、未だ遠慮がちに揺らめく細腰。
もっとを感じさせたい欲求が高まる。
「あっ・・・!・・・っん・・っ・・・っ・・・み・・ろ・・・・っ・・・」
今までとは違う刺激に眉を寄せて、
否応なく生まれる吐息を押し殺して・・・
・・・我慢しないで・・・」

「ああっ・・・あっ・・・っや・・んっ・・っん・・・!」
下着に差し入れた指にねっとりとした蜜が絡みつく。


(もし犯した罪を償うことを求めるならば・・・・)

秘所を舌で執拗になぞられる、その度に甘く強い痺れがの全身に
津波のようにいきわたった。
「あぁん・・・う・・・っやぁ!・・・み、ろ・・・」
「もっと・・・感じて・・・」
「ふぅ、ん・・・んんっ・・・っあ・・・・・そ、こ・・やっ・・・」
恥ずかしさも通り越す位に自分を翻弄する俺の愛撫を、遠ざけたいのか
それとももっとほしいのか・・・・
蕾を、滴り零れる艶かしい輝きを舌で絡めとる度
は足を大きく開いて腰を浮かせる。
「みろぉ・・・!きもち・・・そんなこと・・・・しない、・・でっ・・・っ・・・」
の両手が俺の頭に添えられ髪をかき乱す。
「ミロっ、わたしっっあっ・・・・はぁっ・・・っあ、っあぁ・・・・みろっ・・・」
これ以上ないくらい膨らんだ蕾と、
小刻みに震えだした両足が第一の絶頂が近いことを暗示する。
「みろっ、ぃやっ、いやっ!・・・・!っ・・・・・!」
愛撫を強め秘部に指をぬるりと差込んだとたん、
「みろっ、みろっ!ぁあああっ・・・・あっ・・・っ・・っ・・・っあ!!」
何度も俺の名を呼んで、は絶頂へと旅立った。


(全部俺が引き受けるから・・・)


やっとひとつになれる。
それは今晩限りだけど・・・。
まだ先程の波を引きずったままのに覆い被さる。
もう引き返せないくらい、快感にのまれる事を望んでやまないのに、
ふたりの瞳に隠しきれない一筋の光、それは同じ色をして。
これから本当の罪が始まるのだと、

それでも引き返したくないのだと・・・。

・・・ずっと、・・・ずっと愛してた・・・。」
重荷になるだけの愛を捧げた。
それを聞いた瞬間俺から目をそらして、耐え切れず顔をそむけた。
きつく閉じられたの睫に涙が浮かび、二度と抱かれることのないベッドに
悲しみの跡を残す。
「泣かないで?・・・?最後まで、・・・俺を受け止めて?」

「いい?」
は2、3度コクコクと頷いた。
右手を首の下に滑り込ませて、優しく抱く。
髪に額に瞼にキスをして
最後に唇にして、合図を送る。

秘所に俺のモノをあてるとはピクリと反応し、背中に手をまわした。
「ミロ・・・」
「大丈夫・・・力を抜いて・・・・」
愛液を十分に絡めて、秘所を往復させる中、中心を探りあてると
奥を目指してゆっくりと力を込める。
「あっ・・・はぁっ、っん・・・」
「・・・・っく・・・・・・!」
早くも先端がによって締め付けられはじめる。
もまた、爪をたて中心に向かって無理やり押し広げられる感覚に敏感に反応した。
先端を溢れかえる泉に埋め込むと、高みにのぼりつめたい感じをコントロールしながら
さらに圧迫感を加え続けた。
「みろっ・・・だめ、な・・・もう・・・・っは・・・ぁうっ・・・・!」
奥まで埋め込んだ時には、のナカはヒクヒクと蠢いて、あと少しも
刺激を無視できなさそうだった。
・・・?・・・っ、もうちょっと、我慢・・・して・・・?」
俺にとってもそれが何よりの快感で、愛おしさそのものだった。


第二の波を無理やりおさめるまで、は唇をかみしめて声を殺す。
髪だけを撫で続け、なるべく身体を動かさないようにしてが落ち着くのを待った。




(この時を誰にも邪魔されず刹那の喜び得られるなら・・・)



この期に及んで、まだどこかでの心変わりを期待してる。

部屋に響く嬌声・・・
ギリギリまで引き抜いて最奥を目指してを引き裂く。
「ぅん・・・ぁ・・・っぁ・・・・はぁん・・・。」
「はぁっ・・・・すご・・・・」
締め付けの強さに溜息が漏れる。
今夜限りという約束がふたりを乱れさせる。
気が遠くなるような快感を必死でやり過ごす
首を反らし、肌を粟立て
紅潮した頬に汗で髪がはりつく。
どんな様子をとってみても、気持ちを高ぶらせない姿などなかった。
締め付けに半分意識が飛んだ頭でを目に焼き付ける。

だんだんとスピードを速めて小刻みに動かし
「ぁん!あうっ・・・っ・・・みろっ・・・きもちい、い・・!」
途切れ途切れになる言葉に
高まる快感も気持ちも、波にのせて。
「・・・・っはぁ・・・・・のナカ・・・きもちいい・・・。」
「やぁっ・・・・んっ・・・・!」
ふいに伸びるの右手が俺の動きを抑制しようとする。
「み、ろっ・・・・あっ・・・そんな・・・いやぁっ・・・・っく・・・!」
が・・・感じるところ・・・もっと・・・みせて?・・・っ!」
手首を拘束し、シーツに押付けた。
自分の限界を早めるだけなのに、の気持ちいいことろを強く突き上げた。
あられもない声に、その時がやってくる感じがおし寄せる。
「だめぇっ・・・みろっ・・・あっ、あっ・・・ぃっちゃう・・・いっちゃう・・・っ!!」
っ・・・俺も・・・!!」
その声に反応して、絶頂を目指して自身を激しく動かした。
俺を求める瞳が苦しげに閉じられると同時に、より激しい収縮がおこった。
「・・・ああああっ!みろっ・・・!!」
2、3度腰を打ちつけ、最大限に押付けてから一気に引き抜く。
「くっ・・・・!!」
白い液を蓄えた核が膨らみを増す。
の下腹部にミロの熱が吐き出された。
















(幸せな結末などなくていい・・・・)


夜明けが来るまで何度か愛し合い、君を自分に刻み込む。
そしても・・・

なのに何故だろう?
こうやって、シーツを胸に引き寄せていつの間にか眠ってしまった
を見ていると

さっきまでの事がまるで嘘のようで・・・
あんなにそのぬくもりをこの手で掴んだはずなのに。

そう、本当に自分のものにならない限り
”忘れる”だとか、”あきらめる”なんて言ってみたって
強がりにすぎない・・・。
未練にすぎない・・・。
敗者の戯言・・・。


の目を覚まさないようにそっと身をおこして
決心が鈍らないうちに、額に手をかざした。

「約束、だからな・・・・」
広げた掌に小宇宙を集中させ、軽く力を込める。
その熱が光を放ち、の前髪をさらさらと揺らした。
あと少し、この手を額に押し当てれば・・・
さっきまでの事はすべて幻となり、は苦しさから解放されるだろう。
さっきのコトも、俺の恋心さえ、
の記憶から悲しいくらい跡形もなく、消えうせるのだろう。

次の瞬間訪れる絶望に、思わず小宇宙をひいてしまった。


の寝顔

そうやって瞼を閉じて
少し足を曲げて

眠るのだな・・・・



さっきは何度を抱いても
絶頂に導いても
満足感も 征服感も
砂山のように崩れ去っていった
受け止める器がないかのように、心を通り過ぎていった。

けど それでいいんだ。
俺はの思い出 ちゃんともらった

だから はすべて忘れて
あいつと幸せになれ・・・

朝がくればの幸せを願う気持ちは消えているだろう
でも今は そう思う・・・


「さよなら・・・・・・・」
再び額の中心に手をかざす。
「ホントに、愛してた・・・・・・」
閃光が部屋にひろがり、記憶が消された事を確認して
手をおろした。


身体に残ったのは
やっぱり絶望だった。

















朝、それは夢が覚める時・・・




ベッドの脇の椅子に座ってが目覚めるのをじっと待つ。

やがて瞼の下の目が動きをみせ、意識の覚醒をものがたった。
夜中の出来事が嘘のように、昨日会った時のまんまの洋服。
寝て皺がついた所以外、変な乱れはなかった。

うっすらと目を開けたは、見慣れない天井に怪訝な表情をした。
”今日もまた仕事か”的ないつもらしさで、もっさりと身を起こして
俺を発見したようだった。
「あれ、ミロ?・・・私どうかしたっけ?何で・・・うわっ、ひょっとして眠っちゃったのぉ?」
この瞬間すべてが現実に戻ったんだと、予想以上の衝撃に打ちのめされそうになった。
「いや、・・・ったく気がついたらねてるんだからよ・・・」
もっとハイテンションな俺を演じなきゃ。
「ごめん、ごめん!」
は右手を顔の前に持ってきて謝る仕草をした。
「他の男の家で眠りこけやがって、カノンに言いつけるぞ!」
「うっ、それは勘弁・・・。」
カノンの響きに本当に胸が締め付けられた。
「もう朝だから送らなくても大丈夫だよな?」
これ以上一緒にいると気が狂いそうで
封印すると決めたはずの心が爆発しそうで、
とにかく1人になりたかった。
「もちろん。」






「じゃあね、また教皇の間で!」
は笑って手をあげた。
俺の悲しさにすごく不釣合いな明るさで。
「おう。遅刻すんなよ!」
「ミロこそね!」
天蠍宮の廊下を出口に向かって歩き出した。
もう二度と昨日の夕方みたいな気持ちで、がこの廊下を通り過ぎることはない。
さわやかな朝の光を浴びた遠ざかる後姿。

「遅刻したらバラしてやるぞー!」
もうこんな切ない気持ちでに声かけたりしないから。

「やーめーてー・・・・!」
笑い混じりにそう言った声は宮に響いていた。
そしてさっきのの声より遠ざかっていた。








(幸福の対価を払うには、俺の心弱すぎる・・・)




を見送った後、現実から逃げるように急いで部屋に戻り、服を脱ぎ捨てシャワーをひねる。
勢いよくあふれ出た水は、まだ冷たくて・・・
でも何もかも、この泣き出しそうな気持ちを洗い流してしまいたくて・・・

「くそっ・・・・!!」
壁に拳を打ち込む。
何度となく。
っ・・・・っ・・・」
赤く色づいた水が排水溝へ向かっていく。

さっきまで君がいたのに
今この胸にあるものが、虚しさだけなんて
寂しすぎて

忘れる約束なんて
交わさなければよかったのか・・・・

を抱かなければ
嘘をつき続ければ・・・・

何もかも壊してしまう前に
誰か 俺をこの悪夢から連れ出してほしい・・・


「愛してるんだ・・・・!」

君に出会って 本当の愛を
愛しいと思うどうしようもない気持ち 知ったのに



どのくらいの強さで君を想ったら
どれくらい君の残酷な眼差しに傷つけば
悲しみの時は巡り巡って
の心俺のものになるのだろう?















叶わぬ願いだと
神さえ言うだろう

ならば
俺の心
死んでしまえばいい・・・












     終