敬語はやめて








「ミロ〜!」



「なんでしょうか?」


ミロと呼ばれた青年の前に仁王立ちをする一人の女性が居た


「どうして敬語なの!!」


やめてって言ってるじゃない!と少し大きな声で言う


「それはできませんよ様。だって貴女様は―――」


我らが女神アテナの義理のお姉様なのですから


と静かに続けられた言葉にと呼ばれた女性は尚も食い下がるように言う



「ミロ!貴方は私の気持ちを知りながらもそう言うのですか!?」



長い髪を揺らせ



懇願の意を込めた瞳がミロを射抜くように見つめる


その瞳を真っ直ぐ受け止めることが出来ないミロは斜め下を見る感じに瞳を伏せた



「わかって・・・ください。」


唇をかみ締めるミロにこれ以上何も言えないと思った彼女はその場を後にした。




バタンと扉が閉まった瞬間


ミロは壁に己の拳をたたきつけた



「くっ・・・そ!!」


叩き付けられた拳からは真っ赤な血が滲み床を濡らす

ポタポタ―――


「俺はどうすればいい・・?」


ポタポタ―――


好きになってはいけない人を好きになってしまった


このやり場のない気持ちを


どこにぶつけたらいいのだろう



ポタポタ――


透明の雫が先ほど流れた血の上に被さるように落ちる








アテナには血の繋がらない姉が居た



だがそんなの関係なく沙織は姉に懐いていた。


大切なお姉さまに手を出すなと黄金聖闘士はじめ全ての聖闘士に言われた


”約束”だった



だがそれを守ることが出来ない俺がそこに居た。



一目ぼれだった


彼女の全てに触れたい・・そう考えると


想いは一人でに走り出すかのように



止められなかった



彼女も、自分の立場をわかりながらも


俺の気持ちに気づき


尚俺を愛してくれた



嬉しかった






だが俺たちは世間でいう”恋人”ではない



アテナの義理の姉



これが邪魔をして俺は一歩も踏み出すことが出来ていない



様は関係ないと言ったが果たして本当にそれが通じるかどうかはわからん。



だから・・・・



俺は狂おしい程愛している様と結ばれることを望んでいない



望んでいないのは嘘だ


望んでいる


だが望んではいけない



「愛しています・・・」



貴女だけを



「愛しているんです・・・」


貴女さえ居れば俺はそれでいい



「俺と共に生きてください」



そんなこと言えるはずがない




「はい喜んで。」



「!!!!!」



先ほど部屋から出て行ったはずの


貴女がどうしてここに居るのです!?


そう言葉が出そうだったが



「辛い現実が待ち受けているかもしれません・・・」



「私は・・・ミロ、貴方と離れる方がその何千倍も辛いことでしょう」


「ですが!!」


どうしてそのように微笑んでおられるのですか!?



「俺が・・・・貴女を愛してしまったばかりに貴女にまで辛い想いをさせるのですよ!!」


「それは違う気がするわ」



「なっ・・・」


「だって、愛してしまったのだもの。それに恋愛には色んなトラブルも必要よ?」


どんなトラブルだ・・・



「道は色んな所で分かれているの。そして私とミロが目指す場所が一緒なの」


「?」


「だから、そこへ行くためには貴方が必要だしそして私が必要でしょ?」



人生の道のりを言っているのだろう。


俺と同じ場所へ・・・行ってくれるのか?



「例え途中で道に迷いそうになっても貴方が居れば怖くないしね!」


貴女には敵いません




「俺も貴女さえ居ればどのように真っ暗な道でも迷うことはないでしょう。」



そう言って一歩ずつ近づく



様の頬はきっと恥ずかしいことを言ったと思われたのだろう少しばかり赤く染まっている




「ミロ?」


「なんですか?」


軽く腰に手を回してみると二人の距離はグッと縮まる



「あっ・・」



「そのように可愛い声を出されてはこのミロでも我慢できませんよ?」


そう耳にそっと囁きかけると返事にならない甘い声が再び発せられる


「っ・・・。愛してます。ずっと貴女だけを想って生きてきました。」


「わ・・私も。ん・・・ミロだけが好き」


「好き・・だけではこの心満たすことができません!!」


更に甘く囁く


「!!あ・・・愛して・・・ます」



潤む瞳からは静かに涙が流れそれさえも惜しく感じた俺はそれを掬うように口付ける



「やっと・・手に入れた。貴女の全てを・・・」


自分でもわからないほどきっと優しく微笑んでいるだろう



目の前の俺の姫は顔を真っ赤にしてそして小さく頷いた。




「俺と一生を添い遂げてください」


「!!はいっ!!」













それから前途多難な日々を送り



アテナからのお許しが出て



俺たちは本当に伴侶になれた




様」


「もぉ、ミロ?その様はやめてくれない?あと敬語も!私は貴方の妻なのですからね??」



「癖なんですよ。」



「でも、そんなミロも大好き」



「俺も、の全てを愛してる」













あとがき


FEVER様!!すみません!敬語ミロリクエストありがとうございました!
ですがこれは本当にミロなのでしょうか!?
敬語ときたら私は”ムウ”様しか思い当たらなく
難しかったですが・・・
どうかお許しください。


2005.08.08
水神剣




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