+ + + くちぶえふいたら + + +



ある日の執務室


ピューピュー
ひゅぅ〜
・・・


「うぅぅ〜・・・・どうしてできないのよっ!!」


「ったく、うるせぇんだよ。」
「あきらめたらどうだ?」

デスマスクとシュラに呆れられても、は口をすぼめて練習し続ける。


「だから、。こうだよ、こう。」
「こう?」

ミロが手本を見せる。
としては全く同じようにしてるつもりなのだが、やはりどこかが違うらしい。


ピューピュー・・・
丸めた唇からは風が抜けるばかりで音が出る事はなかった。

「っあーーーーっ。何故なの?どうしてなの?」

は一人でプリプリしながら、給湯室へ向かった。
口笛の練習をしながら。


「アイツは・・・なんで口笛をふきたいんだ?」
「知るか。」

シュラとデスマスクは、書類を作成しながら話をした。


しばらくして、お盆に人数分のティーカップをのせたが給湯室から戻ってきた。
執務中のメンバーに紅茶を配りながらも、相変わらず口がピューピューいっている。

「どうぞぉ、ピューピュー・・・」
「おっ、サンキュー。」


「はい、デス。ピュー・・・」
「練習はいいけど、ツバとか入ってねぇだろうな?」
「失礼ね、イヤなら飲まなくていいから。」


「はい、サガ。ピュー・・・・」

サガはが自分に紅茶を持ってきてくれた事に気づき、顔をあげた。

「ピュー・・・・あ・・・。ひょっとしなくても、うるさい?」
「別に、私はきにしていない。」

『やめてくれ』といわれるのも悲しいが、
気にしていないと言われるのも、無視されているみたいで悲しい。

「まぁ・・・気になるとすれば、おねだりしているそのくちびるか。」
「へ?」

「んん?」

サガとの唇が重なったのを見て、その場にいた黄金たちは目を見開いた。
執務中にこんなことしそうにない、この男が・・・。


「フッ、キスしてほしいのかと勘違いしてしまった。という事にしておいてくれ。」

そう言って立ち上がると、口を押さえて頬を染めたままのをからかうように見た。
そうして、『資料室にいってくる』と言い残すとティーカップ片手に、去っていく。



「サガったら・・・ふふふっ。」

呆然とする黄金たちをよそに、本人は機嫌がいい。


「ま、あいつらはな・・・。」
「そうだな。」


微妙な会話をするデスマスクとシュラ。
ひとり納得できないのはミロ。

「がぁぁぁぁぁぁっ!!」

そう叫びながら頭を抱える。

「!!急に変な声を出すな、心臓に悪いだろうが!!」
「ちくしょーーーっ!!何でサガは俺がしたくても出来ない事をあっさりやってくれるんだよぉっ!!」


そしてミロは、もう一度ショックをうけることになる。

。」
「ん?」

の背後から近づいたカノンは、振り返ったに。
ちゅっ。

「なかなかうまかったぞ・・・」


そう言って、サガの机に書類を置くと、同じように資料室へと消えていった。


「カノンったら・・・。」

パタンと閉まったドアのほうを見ながら呟いたは、お盆を戻しに給湯室へ消えた。


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」


がっつん、がっつん!!
納得いかない状況に、机に頭を打ち付けるミロ。

「あきらめろ、ミロ。」
「ぜってー割り込めねぇぞ。」
「俺は諦めないぞ。」


ミロは意を決したように立ち上がると、を追って給湯室へ行く。
しかし、サガとカノンのようにキスしようとしても、『もう、ミロは2人のマネなんかしちゃダメじゃない』と
とりあってもらえず・・・。








「ちくしょ〜。」

戻ってくるなり、机につっぷしてしまったミロを見て
『させてもらえなかったんだろうな。』と察しをつけた2人はポンポンと肩を叩いて慰める。

「お前はさ、弟だから。」
「あいつらは恋人みたいなもんだ。」
「はじめから、勝負にならんてことだな。」



全然慰めにならず、むしろ見事に言い当てられた自分のポジションに
さらに落ち込むミロがいたとかいなかったとか・・・。