Biological Shuffle/バイオロジカル・シャフル |
書籍『A Close-up Kinda Guy』収録(Paul Harris/Tannen Magic Inc.)1983 |
Paul Harris/ポール・ハリス |
演者はデックを取り出し「シャフルしながらFour of a Kindを見つけ出す」と説明します。空中でリフルシャフルを行い、1度目は成功しますが、2度目には左手でリフルしたデックに“うっかり”右手の指をはさんでしまいます。今、デックの任意の3カ所に、右手の人差し指・中指・薬指がそれぞれはさまっている状態です。左手を離し、右手の各指の間で4つのパケットを保持します。 左手でいちばん上(親指と人差し指の間) のパケットを引き抜きテーブルに置きますが、その際、右手の指に当たっているカードを1枚だけ残します。同様に分かれ目にあたるカードを1枚ずつ残し、それぞれのパケットを引き抜いてテーブル上に3つの山を作ります。右手に残った4枚のカードを1枚ずつ表返し、指の入っていた箇所から出現したのがすべてキングであることを示しながら、テーブルのパケットに1枚ずつ乗せます。最後の1枚はテーブルに置きます。 今、テーブルには裏向きのパケットが3つあり、それぞれのトップに1枚ずつキングが伏せられている状態です(4枚目のキングは別に置かれています)。演者は「もう一度最初からやって見せる」と客に告げ、パケットを重ね始めますが、またも“うっかり”パケットとパケットの間に左手の平をはさんでしまいます。手の甲に載っているパケットを取り去ってくれるよう客に頼みますが、演者の指示で差し出された客の手の甲に、なんと残りのパケットを載せてしまいます。下から、パケット・演者の手・パケット・客の手・パケットという状態です。 テーブルに1枚だけ残っている裏向きのキングを取り上げ、客の手の甲に載っているパケットに重ねます。キングは演者と客の手に隔てられた各パケットのトップにあるはずですが、最後にカードを載せたパケットのトップから揃って4枚現れます。 |
リフルシャフルを行ってFour of a Kindを取り出すマジックは、カットによるそれに比べ、圧倒的に少ないように思います。もちろん任意のスタックを保持しつつシャフルを行い、その後に特定のカードを取り出す手法は数限りなく存在するわけですが、「リフルシャフルが必然的要素になっている手順」と定義すると、その類型を私は寡聞にしてほとんど知りません。 実は「Biological Shuffle」は『Close-up Kinda Guy』が刊行される以前に『Richard's Almanac』で紹介されており、そのときの手順は上記のものと若干異なっています。前半のキングの出現まではほとんど同一なので省略し、以下に後半の手順を紹介します。 指の間から引き抜いたパケットはテーブルの上で重ね、1つの山にします。右手に残った4枚のカードを1枚ずつ表返し、すべてキングであることを示しながらテーブルに並べます。 両者を比べると『Richard's Almanac』収録時には、強烈なFour of a Kindの出現を受けて手順を継続・収束させうるだけの第2の現象がまだ用意できておらず、後半に仮のEffectが据えられているような印象を受けます。その後の再構築によって後半部分が整えられ、「Biological Shuffle」はPaul's Touchが存分に発揮された奇妙なスタイルで完成しました。この作品が『Close-up Kinda Guy』の巻頭に据えられていることに、Opening Actとしての考案者の自信を見て取るのはいささか考えすぎでしょうか。 |
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(参考) |
◆ Lecture Note ◆ Booklet |