The Gymnastic Aces/ジムナスティック・エーセス
書籍『ルポールのカードマジック』収録(Paul Le Paul著・高木重朗訳/東京堂出版)1991
Paul Le Paul/ポール・ル・ポール

演者は客の目の前で、公明正大に4枚のエースをデックから抜き出します。表向きに保持したデックのそれぞれ離れた位置に4枚のエースを差し込み、完全に押し込んでしまいます。

ここで何通りかの方法でデックをシャフルします。最後にデックを二分しFarrow Shuffleを行うときのように噛み合わせますが、双方を少し押し込んだところで止め、噛み合った片側を片手で持ちます。

エースが完全にデックの中に混ざり、その位置がわからなくなったことを客に確認します。デックを持った手を鋭く下に振ると、噛み合ったデックのどこかから1枚のエースが飛び出してテーブルに落ちます。続いて手を振るたびに1枚ずつエースが飛び出し、4枚のエースが揃います。

デックの中に混ざってしまった特定のカードを何らかの方法で取り出す、という手順は星の数ほどありますが、この「The Gymnastic Aces(Paul Le Paul)」は非常に面白い動作でカードの出現を行うため、客の印象に残るという点ではトップクラスの作品であると言えます。
 “半端なFarrow Shuffleのように噛み合ったデックを演者が振る”のは、単に演出上の面白味を狙うのみならず、実はそのMove自体が現象を達成するための必然的な要素となっています。優れた古典の例に漏れず“手順に無駄がない”ことも、演じる側にとっては魅力的な部分でしょう。

About-Face Gymnastic Aces(Larry Jennings)」は、エースを表向きに出現させることを狙った改案。噛み合わせたデックを空中で振るのではなく、それでテーブルをピシャッと叩くとそこに表向きのエースが1枚ずつ出現するという現象です。David Rothが「Pop Outs」でコインを出現させるのと似た動きと言えば、マニアには想像しやすいでしょうか。

Larry Jenningsは「About-Face〜」で、エースの代わりに客にサインしてもらったカードを使うというアイデアも提示しています。これはオリジナルの「The Gymnastic Aces」に採り入れてもよい考え方でしょう。


(参考)

◆ Book
・David Roth「Pop Outs」『Coin Magic』(Richard Kaufman/Richard Kaufman and Greenberg)1981

◆ Booklet
・Larry Jennings「About-Face Gymnastic Aces」『Richard's Almanac日本語版 Vol.31.32&33 合併号』(安崎浩一訳/マジックランド)1995