$1.35Trick/$1.35トリック
Johnson Productsより製品として発売
 

ハーフダラー(50セント)、クォーター(25セント)、ダイム(10セント)という3種類の銀貨を使います。ハーフダラーは2枚使うので、枚数は4枚です。
 この4枚をテーブルに並べ、握った左手にゆっくりと1枚ずつ押し込み、そのたびに合計金額がいくらになるかを客に尋ねます。4枚すべてを入れると「1ドル35セント」になります。ここからハーフダラーを1枚抜き取り、再び金額を尋ねます。客は85セント残っていると考えるでしょうが、左手を開けると何も残っていません。

Johnson Productsの製品の特徴は、何をおいてもその精度にあります。中でもこの「$1.35Trick」はカタログの謳い文句どおり、もはや芸術品と言ってよいほどの出来で、たとえ客が至近距離で調べても仕掛けに気づかれることはまずありません。マジックを趣味としない人たちが想像しがちな「タネ」のひとつのパターンは、こういったものではないでしょうか?

マジックのアイテムには、それ自体で完結していてほかに応用しにくいというものがあります。「$1.35Trick」はその筆頭で、きわめて限定された消失現象にしか使えません。基本手順以外のルーティーンを私は寡聞にして知りませんが、この応用範囲の狭さと製品の出来とをはかりにかけて手順に組み込むか否かを考えた場合、多くの演者がやはり消極的になるのだと思います。

ご存じのように、サムチップが見えないのはその精密さゆえではありません。その意味でこの製品の精度は明らかにオーバークオリティですが、そんな理屈を受け付けない「モノとしての完成度」をこのGimmicked Coinは持っています。


(参考)