Eraser Coin/イレイサー・コイン
Magical Moments/マジカルモーメンツ
 

演者は手から手に渡しながら1枚の銀貨(アメリカのハーフダラー)を示し、最終的にSpellbound Positionで保持します。「コインマジックを続けるとコインが汚れてくるので磨く」と話し、指でコインを何度かこすります。指だけでは汚れが落ちないのでポケットから消しゴムを取り出し、さらにこすります。

消しゴムでこする動作を少し続けていると、縁の一部が一直線に削り取られたように欠けてしまいます。欠けた部分を客に示しさらにこすり続けていると、別の部分も同様に削られてしまいます。縁の2箇所が直線状に欠けた銀貨をテーブルに置き、イーグルの面を消しゴムでこすると刻印が消え、ツルツルになってしまいます。変化した銀貨を客に渡し、調べてもらいます。

客から銀貨を受け取り、最初と同じようにSpellbound Positionで保持します。消しゴムを軽くあてて丸くこすると、銀貨は欠けたり削れたりした部分のない、ふつうの状態に戻っています。消しゴムも銀貨も客に渡し、調べてもらうことができます。

David Rothの発案による手順「The Eracer」に使用する、専用のGimmicked Coin。イーグルの面を消しゴムでこするときに、コインが動かないよう縁に近い部分を指で押さえますが、その部分だけは消しゴムが当たらないため刻印が残るといったディテールが、演技にリアリティを与えています。

添付の解説書には上記のとおり、最後にレギュラーのコインに戻る手順が紹介されていますが、場合によってはこれを行わず、コインが変形した時点で演技を終えてしまってもよいと思います。演技開始時の状態に戻すのはクライマックスの定石だとは思いますが、それまでコインを削り取る役割の消しゴムであったはずなのに、最後にそれでコインをこすると完全な状態に戻るというのは、理屈の一貫性に欠けているように思えるからです。

この製品に関して言うならば、コインを行儀よく初期状態に戻すよりも、信じがたいほどの変化を遂げた状態で客にあらためさせ、そのまま演技を終えたほうが、より強烈な印象を残すことができるのではないでしょうか。


(参考)
◆ Book
・David Roth「The Eracer」『Expert Coin Magic』(Richard Kaufman/Richard Kaufman and Alan Greenberg)1985

◆ Video
・David Roth「Eraser Coin」『David Roth's Expert Coin Magic... Made Easy Volume10』(A-1 Multimedia)1996