Folding Half/フォールディング・ハーフ
Johnson Productsより製品として発売
 

演者は銀貨(ハーフダラー)1枚と、透明な空のボトル1本を取り出し、どちらも客によく調べてもらいます。銀貨の直径はボトルの口より大きく、中には入りません。ところが、演者がボトルの側面(または底面)に銀貨を打ち付けると、音とともに、銀貨はボトルの中に入ってしまいます。
 ボトルの中の銀貨を客に確認してもらったあと、ボトルの口を下にして振ると銀貨が出てきます。出てきた銀貨とボトルを客に渡して、調べてもらうことができます。

まず、Coin in Bottleのバリエーションについて。

上記の手順に近いものとしては「Vacuum Packed(John Bannon)」などを挙げることができます。口を下にしたガラス瓶からピンセットでコインを抜き取る場面は、現象が起こる瞬間をさらにはっきりと客に示そうとする挑戦的試みと言えるでしょう。
 また、別種のチャレンジという意味で「Striking Glass(Michael Weber)」にも触れておきます。「Coin in Bottle Effect = Folding Half」という思いこみを逆手にとった手順で、David WilliamsonのStriking Vanishを使い、この現象に対してSleightのみでの解決を試みた、非常にマニアックな作品だと解釈できます。

Devid Rothは「David Roth's Coin in Bottle Finale(The Inside Out Bottle)」という作品を発表しました。「ボトルに入ったコインを取り出すためには、ボトルの内と外を入れ換える必要がある」という説明をし、最後にボトルからコインを取り出すと、ラベルがボトルの内側から貼られた状態になっているというものです。

さて、Folding Halfはボトルに入る以外にも、さまざまな手順に使用されてきました。主にコインの出現・消失にその特性を利用した作品が多く見られます。「Slow Motion Coin Vanish(Nate Leipzig)」の改案「Slowly Folding(Michael Skinner)」は出現・消失に対するダイレクトなアプローチの一例。Folding Halfを用いた、より完全な消失を狙った作品です。

しかしGimmicked Coinはそれ単体の場合よりも、レギュラーのコインと同時に用いられたときにこそ、その真価を発揮することは言うまでもありません。その意味ではCoins through the Tableの手順にこのGimmicked Coinを利用するという発想は、起こるべくして起こったとも言えるでしょう。

David Rothによる「Folding Coins through Table」は、コインを消失させるためにFolding Halfを用いる作品です。明らかに指先に見えていた数枚のコインをテーブルに投げ出した瞬間、そのうちの1枚がビジュアルに消失する現象は、レギュラーコインでは実現できないものでしょう。
 また「X-Ray Coins(Derek Dingle)」は逆に、出現する側のコインとしてFolding Halfを用いる手順。ガラスのテーブルトップを使って行われるCoins through the Table、すなわち「Glass-Topped Coin through Table(John Cornrlius)」のプロットを、Mustle Passを用いず、Gimmicked Coinの導入で実現しようとしたものです。

これまでの文中では便宜的に「Folding Half」と書きましたが、同様の加工を施したFolding Quarterなども存在することを付記しておきます。


(参考)

◆ Book
・David Roth「A Funnel Coin in Bottle」「New Wave Coin in Bottle」「Folding Coins through Table」「Folding Coins Across」『Expert Coin Magic』(Richard Kaufman/Richard Kaufman and Alan Greenberg)1985
・John Cornrlius「Glass-Topped Coin through Table」『Coin Magic』(Richard Kaufman/Richard Kaufman and Alan Greenberg)1981
・Nate Leipzig「Slow Motion Coin Vanish」『Dai Vernon's Tribute to Nate Leipzig』(Lewis Ganson/Unique)1963

◆ Booklet
・Derek Dingle「X-Ray Coins」『Richard's Almanac日本語版 The Winter Extra』(安崎浩一訳/マジックランド)1991
・John Thompson「ハーフ イン ザ ボトル プラス」『12月3日・奇術の日記念公演・レクチュア ジョン・トンプソン』(中村岳訳/日本奇術協会・発行 マジックランド・製作)
・Michael Skinner「Slowly Folding」『Richard's Almanac日本語版 Vol.2 No.16』(安崎浩一訳/マジックランド)1992
・Michael Weber「Striking Glass」『Richard's Almanac日本語版 Vol.1 No.11』(安崎浩一訳/マジックランド)1991

◆ Video
・David Roth「Coin in Bottle」『David Roth's Expert Coin Magic... Made Easy ! Vol.10』
・John Bannon「Vacuum Packed」『The John Bannon Video "Impossibilia"』(A-1 Multimedia)1990