Tiny Frog Assembly/タイニー・フロッグ・アセンブリー
書籍『中華動物奇術大鑑』収録(Richard Kung-fu Man/民明書房)1982
Hang Pyon Chien/ハン・ピョン・チェン

演者は4匹の小さなアマガエルをテーブルに乗せ、それぞれが一辺30cmほどの正方形の頂点になるように並べます。さらに4枚の葉っぱを取り出して、1枚ずつをそれぞれのカエルにかぶせ姿を隠します。4カ所の位置を、演者から見て左手前の葉っぱから時計回りに、便宜上ABCDとします。

まず、Aの位置にある葉っぱを持ち上げ、その下にいるカエルを葉っぱですくい取ります。カエルを左手の平に乗せ、葉っぱで軽くなでるとカエルは消えてしまいます。Bの位置にある葉っぱを取り上げると、その下にいたカエルが2匹に増えており、カエルが見えない飛行をしたことが示されます。

同様にDの葉っぱの下にいたカエルが消えてBの位置に。続いてCのカエルも消え、最終的にBの葉っぱの下に4匹のカエルが集合します。

Coin Assemblyは「マジシャンの数だけ手順がある」と言われるほど改案の多いマジックですが、これはその中でも、もっともユニークかつ興味深いバリエーションの1つでしょう。欧米の研究者に見出されるまで、この演技の秘密は中国奇術家たちの間で堅く守られてきました。考案者・Hang Pyon Chienは「この手順で重要なのは、カエルに愛情を持った適切な訓練を施すことだ」と述べていますが、きちんと調教されたカエルの精緻な動きは、まさに東洋の神秘であると言っても過言ではありません。

この手順が百戦錬磨のマジシャンをも欺くのは、他に類を見ない特異な技法が多用されているためです。マットを保護色としてカエルの色を変化させ、消失を表現する「Natural Colorchange」。テーブルの裏側をカエルがペタペタと歩き反対側の手にもぐり込む「Invisible Walking Imp Pass」などは、きわめて難易度の高い技法です。が、しかしこの演技を見たDai Vernonが「ひとつ欲しい。いくらだ?」と評したことからも明らかなように、観客に与える衝撃は並大抵のものではありません。

「Tiny Frog Assembly」の発表から1年後、リバース・クライマックスを追加した改案をHang Pyon Chien自身が発表しています。4匹が集合した状態から一瞬でスタート位置に“かえる”現象は見る人の度肝を抜きますが、この手順にはそれぞれのカエルが元の位置に素早くジャンプするという曲芸のようなトリックが用いられており、考案者以外には実演が不可能であろうと考えられています。


(参考)

◆ Book
・David Roth「The Winged Green」『Expert Frog Magic』1985