The Mind's Deck/マインズデック
マジックランドより製品として発売
Phil Goldstein/フィル・ゴールドスティン

テーブル上にスケッチブックがあり、その上に透明なケースに入った一組のカードが置かれています。1人の客に手伝いを頼みます。

演者はケースを開けて中から数十枚の白いカードを取り出し、すべてのカードにそれぞれ異なる図形が描かれていることを示します。裏側は真っ白で何も描かれていません。デックを数回リフルシャフルしてから図形の描かれている面を下にしてテーブルに置き、演者は後ろを向きます。

客に背中を向けたまま指示をし、1、好きなところでデックをカットして持ち上げた分をケースに入れ、2、残った山のトップカードを見て図形を覚えてからポケットに隠し、3、残りの山もケースに入れてフタを閉める、という操作を行ってもらいます。

客に、覚えたカードを強くイメージするように言い、後ろを向いたままで「直線だけで構成された図形で、線の数は偶数本」といったいくつかの特徴を述べます。さらにカードのイメージがより明確に伝わるように、ポケットからカードを取り出してよく眺め再度念じてくれるように頼みます。ここで演者は初めて客側に向き直り、テーブルからスケッチブックを取り上げます。そして先ほどよりさらに詳しく特徴を述べつつ、図形をスケッチブックに描いていきます。

最後にポケットから客のカードを出してもらい、スケッチブックの絵柄がカードの図形と一致していることを示します。

名実ともに近代メンタルマジックの第一人者である、Phil Goldsteinの傑作です。

客の目には、切れ目ない一連のやりとりの中で徐々に図形を当てているように見えますが、演者側から見た場合、実は客に背中を向けている時点と振り向いてからとで演技は2段階に分かれており、その双方の原理に天才的なSubtletyが遺憾なく発揮されています。

過去、同様の演技を実現するために「客に相対して図形を当てる方法」が数多く発表されてきました。Phil Goldsteinが考案しこの手順に用いたKeycard Locationに類するMethodも、その流れを汲む、もっとも優れたものの1つと断言してよいと考えます。
 そして、それとまったく異なった「振り向く以前にある程度、図形のイメージを絞り込める原理」。むしろこちらのほうに、氏の非凡な発想をより強く感じる向きも多いのではないでしょうか。この両者が融合し「The Mind's Deck」は
非常に不可能性の高い、厚みのある作品として完成されています。

私のサイトでは、基本的にClose-up Magicの題材を中心に扱っています。この作品は解説書の演出などから判断して、明らかにもう少し大規模な会場での演技を想定して構成されたものだと思いますが、Close-upの場合でもスケッチブックなどの道具立てを少しアレンジすればその効果は何ら減ぜられないと考え、今回紹介することにしました。


(参考)

◆ Video
・Max Maven「The Mind's Eye Deck」『Max Maven's Videomind phase one: Parlor Mentalism』(L&L Publishing)1997