Coin through the Table/コイン・スルー・ザ・テーブル
 
二川滋夫

演者はいろいろな絵が描かれた数枚のカードを取り出し、左手に持ちます。

まず、右手で1枚のカードを引き出し、テーブルの絵が描かれていることを示してそのカードをマットに置きます。同様にカードをもう1枚引き出し、何も描かれていないカード(ブランクカード)であることを示して、先ほどのテーブルのカードの下に重ね、マットに置いておきます。

残りのカードには1枚ずつ銀貨(アメリカのハーフダラー)が描かれていますが、これを手から手に数え取って4枚あることを示します。今、目の前にはテーブルのカードがあり、その下にはブランクカード、手には4枚の銀貨があるというわけです。さて、これで準備ができました。

4枚の銀貨のカードを手から手に数え取ると、そのうちの1枚がブランクカードに変化しています。同様に数えるたびに1枚ずつ銀貨が消えていき、最終的に4枚すべてがブランクカードになってしまいます。「銀貨は、テーブルを貫通してその下に落ちている」と説明し、テーブルの下に置いてあったカードを取り出すと、ブランクだったカードには4枚の銀貨が揃って描かれています。

最後に演者は「実はテーブルに穴が空いている」とタネあかしをします。あらためてテーブルのカードを見ると、描かれたテーブルの天板の中央に、本物の穴がポッカリ空いています。

日本を代表するコインマジックの研究家でありPerformerである二川滋夫が、石田天海賞の受賞記念に発表した作品。コインマジックの古典プロット「Coin through the Table」をピクチャーカードで再現しようという、洒落心あふれる試みです。

「テーブルに穴が空いていた」というこの作品のオチは、元になった同名のコインマジックがどういうものかわかっている人にとっては二重に可笑しいものです。その意味でこのパケットトリックは、ある程度マジックの知識がある人をも、非常に楽しませる作品であると言えるでしょう。

ちなみに二川滋夫は、有名な「Professor's Nightmare」をピクチャーカードで再現した「三本ロープ・カードトリック」という作品も発表しています。異なった3本のロープの長さが揃い、最後には1本の長いロープになってしまうというロープマジックの古典的な現象を、古くからあるパズルの原理を用いることによって、平面上に写し取ることに成功したシンプルな小品です。

【補足】
私がマジックの手順を説明するとき、通常は「テーブルに置く」というような表現を使います。ただしこの手順を説明するときに同様の書き方をすると混乱を招くおそれがあるので、あえて「マットに置く」と表記しました。必ずしもクロースアップ・マットが必要な作品というわけではありません。


(参考)