Razzle-Dazzle/らずる・だずる
Trik Kard Specialtiesより製品として発売
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Nick Trost/ニック・トロスト

演者は青裏のパケットを取り出し、手から手に数え取って4枚のクラブのクイーンであることを示します。いちばん上の1枚を裏返してもう一度数えると、4枚すべてが同様に裏返っています。このひとつめの現象でパケットがすべて青裏のクラブのクイーンであることが消極的に示されます。

そのパケットから1枚のクイーンを抜き出して裏向きにテーブルに置き、その代わりにテーブル上のケースからあらたに赤裏のクラブのクイーンを1枚取り出して、パケットに加えます。青裏3枚に赤裏を1枚加えた状態ですが、演者がマジカルジェスチャーをかけてからパケットを数えてみると、4枚すべてが赤裏に変化しています。

変化した赤裏のパケットから同様に1枚をテーブルに置き、あらたに取り出した緑裏のクイーンを1枚加えます。数えてみると4枚の裏の色が今度は緑に変化しています。1枚だけ表向きのカードがありますが、この裏も緑に変化していることが示されます。

最後に緑裏のカードを1枚テーブルに置き、裏面が鏡のように光るクラブのクイーンを追加すると4枚とも同じ鏡の裏模様に変化します。が、次の瞬間、4枚の裏模様がそれぞれ赤・青・緑・鏡に変化します。最初に示した4枚と加えた3枚、すべてのカードをテーブルに置いて示します。

“一組の青裏のデックを裏向きにスプレッドすると、中に1枚だけ赤裏のカードがある”といった具合に、バックが色違いのカードを用いることで高い視覚効果をあげる手順があります。同様の現象がパケットトリックにも見られますが、製品として販売されるパケットの場合、裏面の色が何種類かに変化する、Multiple Color Changeとでも呼ぶべき手順が類型として確立されているように思います。

「Razzle-Dazzle」は、最小限の枚数で最大の効果を得るFake Cardの用い方やハンドリングの一貫性といった点で、Multiple Color Changeのプロブレムに対して非常にスマートな解決を行った作品だと考えます。ある意味、この種の手順における1つの完成形と言ってもよいでしょうが、しかし、この作品が唯一無二のものではもちろんありません。ほぼ同じ現象の作品として「Dirty Deal(Bruce Cervon)」などを挙げることができます。

Dazzle(Alex Elmsley)」もまた、同じカテゴリに分類できる作品と言えます。こちらはバックの色のみならずデザインもまったく違ったものに変化し、それが7回(!)繰り返されて、最後に手に残っている4枚のカードがジョーカーである(Double-Backed Cardではない)ことが示されるというマニアックな作品ですが、Twisting MoveだけをミスディレクションとしてHalf Passを何度も繰り返すという手順構成が、プロブレムのクリーンな解決という点でやや劣る印象を受けます。


(参考)

◆ Book
・Bruce Cervon「Dirty Deal」『カードマジック事典』(高木重朗編/東京堂出版)1983
・Alex Elmsley「Dazzle」『The Collected Works of Alex Elmsley Vol.2』(Stephan Minch/L&L Publishing)1994