Shinkansen/しんかんせん
書籍『FOCUS』収録(Phil Goldstein/Hermetic Press)1990
Phil Goldstein/フィル・ゴールドスティン

演者は2人の客に演技の手伝いを頼みます。はじめに4枚の赤裏のカードを取り出して1人目の客に手渡し、表向きに1枚ずつ演者の手に置いていくことでたしかに4枚しかないことを確認します。そのパケットは裏向きにして、1人目の客に持っていてもらいます。

次に演者は4枚の青裏のカードを取り出し、今度は2人目の客に表を1枚ずつ見せて、4枚がスートや数に関連性のないバラバラのカードであることを示します。パケットを裏向きにし、ボトムから1枚カードを取ってトップに回します。この動きを繰り返して適当なタイミングでストップをかけてもらい、そのときのボトムカードを覚えてもらいます。

ここで演者がマジカルジェスチャーをかけると、選んだカードだけがパケットからパケットへ見えない飛行をします。
 まず、2人目の客の選んだカードだけがパケットから消え、青裏パケットが3枚になっていることが示されます。1人目の客から赤裏パケットを受け取り、ゆっくりスプレッドすると、中央に青いカードがはさまれて5枚になっていることがわかります。そのカードを抜き出して表側を向けると、たしかに先ほど2人目の客が選んだカードです。

Cards Across現象です。タイトルの「しんかんせん」とは、目にも留まらない速さで飛ぶように移動するという意味でしょうか。親日家のマックス名人らしいネーミングに、マニアはニヤリとすることでしょう。

この種のCards Acrossは、そのMethodがさまざまに考案されてきました。Palmingを用いて客の選んだカードを本当に移動させる方法もあれば、False Countによって枚数の変化を表現する手順などもあり、その中に演技の不可能性をいっそう高める目的でGimmicked Cardを採り入れた作品が生まれてきたことは、自然な流れであったかもしれません。

この作品においてもっとも強烈な印象を与える点は、客が配って4枚だと確認したパケットが5枚に増える部分でしょう。優れたマジックの多くがそうであるように、この現象もまた「こんなタネが本当にばれないのだろうか?」と心配されるほど、単純かつ大胆な原理によって実現されています。Gimmicked Cardによる直接的なアプローチが、プロブレムに対して非常に高い効果をあげている作品と言うことができるでしょう。


(参考)