Paperfold Prediction/ペーパーフォールド・プレディクション
書籍『マーチン・ガードナー・マジックの全て』収録(Martin Gardner著 壽里竜訳/東京堂出版)1999
Martin Gardner/マーティン・ガードナー

演者は1枚に1ヶ月が印刷された12枚綴りのカレンダーを取り出し、これから客にしてほしいことのデモンストレーションを行います。

カレンダーの適当な部分から、3×3の範囲を切り抜きます。数と数の間に折り目を入れて好きな方向に折りたたんでいき、最終的に数字(日付)1つぶんのサイズになるまでそれを繰り返します。紙9枚分の厚みのある1ブロックサイズの状態になったら、その四辺をハサミで切り取りバラバラにします。適当に切り取った部分をランダムに折りたたんだので、数字もバラバラで、当然中には裏向きのものもあります。
 ここで表向きになっている数字だけを合計します。今は例を示しているだけですから数字自体は重要ではありません。ここでは、折りたたみ方によって最終的に導かれる合計数が偶然に決定されることを示します。また、裏向きになっている数字も合計して表向きのものと食い違うことを示し、最後に四辺を切り落とす前に紙をひっくり返していたら、それだけでも合計数が変化していたことも示しておきます。

さて、ここから客に同様の作業をしてもらいます。残りのカレンダーの中から好きな1枚(月)を選ばせますが、さらに難しくするために「4×4」を切り取ってもらいます。客に紙片を渡し、先ほど3×3で示した例のように好きなように折りたたむように指示して演者は後ろを向きます。客が折りたたんでいる間に演者は紙に予言の数字を書きます。

折りたたむ作業が完了したら演者は前に向き直り、たたんだ紙のどちら側を上に向けるかを念のために確認して、ハサミで四辺を切り取ります。バラバラになった紙片の中で表向きの数字だけを合計してもらうと、あらかじめテーブルに置いた予言の数字と一致しています。

Martin Gardnerと言えばパズルの世界では知らぬ者のない存在ですが、この作品を見ると、きわめて合理的に構成された手順に、マジックの分野においても彼がひとかたならぬセンスを発揮していることがわかります。出典に引いている『マーチン・ガードナー・マジックの全て』の中には物体の出現や変化といった現象も解説されてはいますが、やはりこの作品のように数理的な原理を応用したものや、トポロジカルな発想に基づくパズル的な作品にその飛び抜けた才能を見ることができます。

同書に収録された数理的な作品は、まず基本となる数学的原理を説明し、そのパズル的な応用を解説して、さらにマジックとして演技する場合に必要な演出を付け加えるといった紹介のされ方をしています。

上記手順は、パズルの世界ではよく知られた「表裏綾切りの原理」に基づいたものです。Martin Gardnerは、4×4のマス目に1〜16の数字を順に振って、それを上のように折りたたんだ場合の表向きの合計数が68に特定されることを解説し、さらにこの原理が1〜16に限らず、あらゆる連続数に応用できることを述べています。ただ、これ単体では優良なパズルを紹介したにすぎません。この原理をカレンダーというきわめて身近なアイテムと結びつけ、マジックとしての完璧な演出を付け加えた点にこそ、彼の非凡さを感じるべきだと思います。


(参考)

◆ Book
・「Flying Carpet」『カードマジック入門事典』(高木重朗ほか編/東京堂出版)1987