■ Elmsley Countの目的を考える

「ここに4枚のカードがあります。1、2、3、4枚・・・」

初心者にパケットトリックを見せてもらうと、上のような台詞とともに、左右の手から手にカードを渡しているような戻しているような、はたまた混ぜているかのような(笑)、見るからにアヤシイ動きを目にすることがあります。これは本人が「この技法は何を目的としたものなのか」がはっきりわかっていないことが原因だと思います。

話の流れとして「Elmsley Count」を例に説明します。このFalse Countは、Alex Elmsleyが1954年に発表した技法(初出時は「Ghost Count」)で、特定のカードを見せずにパケットを4枚に数えるテクニックです。その利便性からまたたく間に流行し、「Twisting the Aces(Dai Vernon)」に代表されるさまざまな作品に取り入れられました。そして現在なお、パケットトリックでもっとも多く使われる技法のひとつと言えるでしょう。

このカウントを「5枚以上あるカードを4枚に見せる」ために使っている人をときどき見かけます。もちろん手順の中で、そのように用いられることがないわけではありませんが、本来このカウントは「カードの裏表の状態を示しつつ順を入れ替える技法」であり、4枚に数えることは副次的要素にすぎません。本当にカードが4枚であるなら、軽くカードを広げてみせればよいだけのことで「1、2、3、4」などの掛け声とともにシャコシャコとカードの受け渡しをすることは「本当は4枚ではないんですよ」と言っているようなものです。
 加えて言うなら、5枚以上のカードを4枚に見せたいのであれば、Buckle Count、Ascanio Spreadなど適した技法がほかにあり、その意味でも「4枚に数える」ためだけであれば、Elmsley Countを用いるのは適切ではありません。

技法の練習は重要ですが、その技法の意味を理解し適切な箇所で使用することはさらに重要です。