■ 機械仕掛けのマジック

一般の(マジックを演じない)人の中には、マジックの道具にはとてつもなく精密な機器が入っているに違いないと考えている人がいます。トランプ1枚ずつにセンサーの類が組み込まれている、などと推測する人までいるようですが、演じる立場から言えば、そんなデリケートな道具は故障が心配ですからあまり触りたくありません(笑)。

上は極端な例ですが、実際に無線で動作するようなハイテク機器が徐々にマジック製品に入り込んで来ていることもたしかで、特にメンタルマジックにおいて情報を密かに演者に伝える目的で導入されているケースが多いように思います。不可能な現象を実現するために、これまで数多のマジシャンがさまざまな手法を編み出してきましたが、しかし今や専用の(たいていは非常に高額な)製品を購入することで、同様の演技を行うことが可能となる場合があるのです。

その一方で、機械仕掛けでマジックを演じても面白くない、と主張する人ももちろん多くいます。巧妙な原理や手練によって客の裏側をかくことがマジックの醍醐味であるという意見には同感ですが、私は、ハイテクを駆使したGimmickを全面的に否定するつもりもありません。大切なのは客の目にどう映っているかであり、その意味では、One Aheadのような原理もCenter TearのようなSleightも、そして高価な精密機械もすべて等価だからです。

アマチュアの立場でもっとも大事なことは、まず演者自身が楽しむことだと考えます。マジックのどういった面に自分が楽しみを見出すかによって、採用する手法が自ずと決まってくるのではないでしょうか。