■ マジックランドの魅力を考える

先日、久しぶりにマジックランドに行って散財してきました。今でこそ臆することなくこの店の扉を開けて、あれこれと商品を物色することができますが、初めてここを訪れたときには緊張でとてもそれどころではありませんでした。うっかり何かを口にすると、マジックの経験の少なさを鼻で笑い飛ばされそうな気がしたものです。一度でも店に行ったことのある人なら、私の言葉の意味がわかるでしょう?

雑然と積み上げられた商品群とおぼしきダンボール。後ろに何を隠しているのかわからない厚いカーテン。天井にベタベタと貼られたスナップ写真…。まるで倉庫のようなこの空間をしかし、来日した外国人マジシャンの多くが「The Center of Magic in Japan」と評します。また日本の愛好家たちが許す限りの時間とお金をここで浪費していることからも(笑)、結局ここが日本におけるマジックショップの頂点であるという意見に異論は少ないのではないでしょうか。

さて、老舗と呼ばれる多くの店がそうであるように、求められない限り客を放っておく余裕がマジックランドの魅力の1つだと私は考えます。雑誌からの受け売りですが、ある紳士服の老舗店では、訪れた客に対して声をかけることをほとんどしないそうです。客が店内の商品を存分に吟味した末にいざネクタイを1本購入しようとすると、それを締める人はふだんどういった仕事をしているのか、どんな素材の上着を好み何色のシャツを多く持っているのか…、といったことを事細かに店主に尋ねられるのだとか。これはけっして売り惜しみや嫌味で行っているのでないことは言うまでもありません。客の手に渡る製品に万全を期したいがゆえの接客態度なのです。少し大げさな例えになりましたが、私はマジックランドにこういった店とどこか通じる雰囲気を感じます。

マジックショップは必要以上に広く門戸を開くことはないと私は思っています。冷やかしの客に愛想を振りまくことなく毅然と構える態度、初心者が扉をくぐることを躊躇させるほどの雰囲気、マジックというPerformanceを扱う立場としてそういった店こそ正しく老舗なのだと、今となっては思います。こんなことを書いていると「何、勝手なこと言ってるの!」というママさんの声が聞こえてきそうですね(笑)。