■ パケットトリックの捉え方

マジックを趣味としない人にとって、トランプは1組52〜54枚揃っている状態が普通です。ですから「ここにトランプが10枚あります」というのは、非常に見慣れない状況のはずです。ましてや「ここにハートのエースが5枚あります」なんてもってのほかです(笑)。

こういった状況に慣れすぎてはいけません。マジックは常識を裏切ることで成立するものですから、何が普通で何がそうでないことなのかを演者がきちんとわかっていないと、その基盤が崩れてしまいます。

パケットトリックはすでにクロースアップ・マジックの一分野として確立された感がありますが、トリックカードを含んだ数枚だけを最初から客の前に示し、False Countであらためてから演技に入るというスタイルには、私はいまだに抵抗を覚えます。
 「Oil &Water」「Follow the Leader」「Re-set」などをレギュラーカードで演じる場合は、例外なく誰もがデックからカードを抜き出して演技を始めることでしょう。特定の場合に限って、奇妙なケースから数枚のカードを取り出して演技を始めたら、そのカードの仕掛けを疑うなというほうが無理な話です。

「パケットトリックは、限定されたプロブレムを突き詰めるパズルである」と考えるのであれば、それ以上言うことはありません。私もパズルとしてパケットをいじり回すのは大好きです。が、しかしマジックとして見た場合、原則としてはやはりデックから抜き出したカードで演技を始めるのがもっとも自然で、あるべきスタイルなのではないでしょうか?