■ コインアセンブリーを知らない世代

動画サイトや安価なDVDの普及で、マジックがかつて持っていた隠匿的な性質は薄くなりました。ほんの10年ほど前までは「外国人マジシャンの演技を見る」ことだけでも、かなり積極的な努力が必要でしたが、今やYouTubeのリンクを辿るだけで、Larry JenningsのカードもDavid RothのコインもTommy Wonderのカップ&ボールも…、とにかく何でもすぐに見ることができます。

ひと昔前まで、たいていの人にとってマジックとは、一定の段階を踏んで習得するものであったように思います。例えばコインマジックに関して言えば、私の場合まず二川滋夫氏の著書を読み、次に洋書を読み、マジックランドを訪れ、ビデオを買い、ギミックコインを買い、レクチャーに参加し…、といった具合に、何年もかけて徐々にこの世界にのめり込んできました。そして、それぞれの段階に相応の楽しみや満足がありました。でも今は、マジックショップのサンプル動画を見て、一足飛びに高度なテクニックを解説したDVDを購入する人も多いのでしょう。それが可能な環境が整っているわけですから。

先日「3Flyは得意だが、コインアセンブリーやスペルバウンドというマジックは見たこともない」という若いマニアに会って本当に驚きました。私は何も、コツコツと下積みを重ねなければ、特定のマジックに触れる資格がないなどと言うつもりはありません。ですがこういった話を聞くと、フレンチドロップを学ぶ前にスパイダーバニッシュを習うような不自然さをどうしても感じてしまうのです。

かつての自分と違うのは、世代が違うのですからある意味当たり前です。そう頭ではわかっていても違和感が拭えないのは、やはり歳を取ったからなのでしょうね。