■ スートの名称あれこれ

物の本によるとトランプの起源はインドにあり、その発祥はタロットに由来するそうです。ヨーロッパにおいて徐々にそのスタイルが整えられ、現在の形に落ち着いたとか。今、当たり前に使っている4つのスートも、スペードはもともと剣をかたどったもので、軍隊や貴族を象徴しており、ダイヤは貨幣で商業を表現、クラブは棍棒で農民を、そしてハートは聖杯をかたどっており聖職者を象徴しているなど、それぞれに興味深いストーリーを持っていると言います。

さて、私の田舎は秋田なのですが、子どもの頃に帰省して親戚の家でトランプ遊びをしたときに、そこでのスートの呼び方がかなりユニークで笑い転げたことを今でも覚えています。
 まず、ハートはそのまま「ハート」でした。これは標準的な名称のとおりです。クラブは「三つ葉」。棍棒のクラブがクローバーと混同され、三つ葉と呼ばれているのをときどき聞くことがありますね。このあたりまでは、まあふつうの範疇でしょう。問題はここからです。
 ダイヤは「角(かく)」! ですからカードを読むのでも「角の八(かくのはち)」といった具合。なんだか将棋みたいですね(笑)。こういった呼び方を私の親戚が編み出したものか今となっては判然としませんが、おそらく近所に住む誰かがいいかげんに呼び始めてそれが定着したのではないかと思います。

そしてなんといっても傑作なのがスペードです。何と呼んでいたと思いますか? ここで秋田という伏線が効いてきます(笑)。スペードの形はもとは剣を模したものだと前記しましたが、形をシンボライズするという意味では、この呼び方もあながち的外れではありません。スペードは「杉」でした。

【追記】
1組のトランプの構成が、暦と深い関連があるとする説も広く知られています。赤と黒が昼と夜を表し、4つのスートは春夏秋冬を表している。また、各スートが13枚あるのは四季それぞれが13週ずつで成り立っており1年が52週あることとの符合。そしてエースを1、ジャックを11、クイーンを12、キングを13として1デックの数をすべて合計すると364。ここにジョーカーを加えたのが1年の日数365日であり、さらに、エクストラジョーカーが閏年のために用意されているというオマケつきです。
 元来が天の邪鬼な私は、この手の「できすぎた話」に強い警戒心を抱いてしまいます(笑)。どうも都合がよすぎると思ってしまうんですよね。ですが、これがマジックの演出に使いやすい、非常に魅力的な小話であることにはまったく異論はありません。