■ 点を切る

MML(マジックメーリングリスト)の関東オフ会で、幹事の増田さんが何気なく、トランプを「切る」という表現は「Cut」の誤訳が語源ではないかと思う、という主旨の話をされました。私はそれまで、この言葉の不自然さをあまり考えたことがありませんでしたが、言われてみればなるほどそうかもしれません。よく混ぜることを「切る」なんて表現する例はほかにありませんからね。
 日本のマジック黎明期に洋書を訳すにあたって、本来なら「カットする/2つにわけて上下を入れ替える」としなければならないところを、単語のもっとも代表的な意味として「切る」と変換してしまい、しかもそれがシャフルと混同されて定着してしまったという説は、いかにもありそうな話だと私は感じました。

話は変わりますが、私は東北の出身です。実は私の住んでいた地域では、トランプをシャフルする動作を「点を切る」と呼んでいました。親戚が集まってトランプ遊びをしているとき、1回のゲームが終わったら「はい、点切って!」とビリの人にトランプを押しつけたことを思い出します。「点を切る」なんてかなり変わった言い回しですが、物心ついたときから「シャフルする=点を切る」だったので、その意味をあらためて考えたことなど今までほとんどありませんでした。

「切る」だけでもよくわからないのに「点」とはいったいどういう意味なんだろうと、この数日、オフ会での話をきっかけにあれこれ考えていたら、強引な説を1つ思いつきました(汗)。「Cut please」が「切ってください」と誤訳された(もちろん想像に過ぎませんが)のであれば、「点を切る」はもともと以下のような文章ではなかったかと考えたのです。「Cut this packet at any point you like」私が訳すなら「好きなところで持ち上げてカットしてください」ですが、マジックにあまり詳しくない人なら「好きな点を切ってください」といった日本語にしてしまうかもしれません。「点=point」という連想から思いついた強引な説ですが、果たして真相はいかに?

【追記】
この文章をアップした翌日に、増田さん本人から「これは花札の用語では?」との指摘をいただきました。私は花札の知識がなく思い至らなかったのですが、いやはや、博識な人の前でめったな自説を披露するものではありませんね(大汗)。

花札で新しいゲームを開始する際、一人が札を混ぜ(これは通常のヒンズーシャフルのように行うことが多いようです)それを別の人がカットし、さらに親が配るという段階を踏むのですが、このカットを花札では「のぞむ」というそうです。そして「のぞむ」動作のうち、山の上半分を持ち上げるのが「天を切る」部分というわけです。点ではなく天だったのですね。
「上半分を取り分ける=天を切る」とは、直感的でわかりやすい例えです。「at any point」もイイ線を行っているような気がしていましたが、とうていかないません。ハハハハハ。