■ 15パズルと超魔術のブーム

15枚のピースを正方形の枠の中に並べ、空いた場所にピースをスライドさせて絵柄を揃えるパズルに、誰でも1度は挑戦したことがあるのではないでしょうか。19世紀に生まれたものらしいですが、最近でもパソコンのガジェットなどに採用されている手軽なパズルです。
 この「15パズル(15ゲームとも)」を使って、パズル界の巨匠サム・ロイドが「14と15を入れ替えた状態を元に戻す」という問題を1000ドルの賞金をかけて出題したため欧米で大流行した、という話は、パズルマニアの間では有名です。実はこれはけっして解くことができない不可能な設定であった、という部分まで含めて。

どうにかするとできそうだ、という絶妙な設問が多くの人の意欲をかきたて、当時のブームを作りあげたのだと想像します。現在であれば、検索サイトに「15パズル」と打ち込めば、すぐに解なしと判明して流行もしないでしょう。何でもすぐに知ることができる環境は、パズルやマジックを盛り上げるのには向かないのかもしれません。

ほんの20年ほど前、まだインターネットは一般に普及してはいませんでした。その頃ブームになったMr.マリックの数々の演技は「超魔術」だと考えられており、「手品は皆インチキだが、マリックさんのアレは本物だ」と信じている人が私の周りにも多くいました。今なら、その気になって調べればシガースルー・コインやインビジブル・スレッドの情報をすぐに得ることができるでしょうから、そうなればあの超魔術ブームも同じような形では起こらなかったでしょう。

「このパズルはいくら考えても解けない。でも、どうかすれば解けるような気もする」
「マジックだと思うがタネの想像がつかない。マジックではないのかもしれない」
そういったグレーゾーンで迷う気持ちが、興味をかきたてたり噂を呼んだりします。瞬時に白黒をはっきりさせなければ気が済まないインターネットは、そういった奥ゆかしさには無縁の媒体だと私は感じます。