■ 買わざるを得ない雰囲気

先日、久しぶりにtoritoに行きました。Iwahiro氏作の「どんぐり小箱」という製品が目に留まり、店主の樹村さんに何気なく「これはからくり箱ですよね」と話しかけたら、そうですよと包装していない製品を1つポンと手渡されました。「いじってみていいですよ」という意味に違いないのですが、私はちょっと躊躇して、少しの間眺めただけでそれを返してしまいました。もしかしてうっかり開いてしまったらどうしようと思ったからです。

若い頃、マジックランドで製品の説明をお願いするのはちょっとした冒険でした。「これはどういうトリックですか?」と質問し、ママさんが演じてみせてくれたら、それを買わないで店を出ることが当時の私にとってはかなり難しかったからです。ですから一緒に行った先輩がさんざん見せてもらった後に「ふうん、それはいらない」と言い放つ姿を見たとき、この人はすごいなあと感心したものです。

考えすぎだとはわかっています。パズルの仕掛けがわかっても、買うときは買いますし、解けなくたって買わない製品もあります。売る側にしても同じでしょう。ランドのママさんが客の退路を断とうとして見せているのでないことは、よくわかっているのです(笑)。
 にも関わらず、お店の人がせっかく薦めてくれたものを断るのが私は今でも苦手です。ですからできるだけ、スーパーの試食も洋服の試着もしないようにしています。パズルやマジックの店では、こちらから望まない限り商品を薦められることがまずないので、ずいぶん気はラクです。