■ 適切な表現方法

「スポンジボールが増える」という単純な現象を表現するのにも、さまざまな見せ方があります。片手に握っておまじないをかけた後、手を開くと2つになっている。1つのボールを両手でねじると、だんだんと伸びて最後に2つにちぎれる。テーブルに押しつけて指で押し切るようにすると2つになる…。客の目に映る印象はかなり違います。

これは、どんな技法を用いるかという話ではなく、Secret Moveが済んだ後、どのような示し方をするかということですから、こうすべきだとか、こうやってはダメという決まりはありません。その人がいちばん気に入ったやり方で存分に不思議をアピールすればよいと思います。

ですが、明らかな過不足があってはやはりよくないでしょう。コインを握った次の瞬間にパッと手を開いてしまうのは、味気ないばかりでなく、握る意味づけがないため不思議さが感じられないと私は思いますし、かと言ってたかだか1枚のハーフダラーを消すのに、「1、息を吹きかけて」「2、指をパチンと鳴らし」「3、マジカルジェスチャーをして」「4、何か台詞をしゃべり」「5、握りこぶしをモゾモゾと動かして」と何十秒も時間をかけるのは、誰の目にもやり過ぎだと映るのではないでしょうか。

マジックが上手い人というのは、技法がこなせるばかりでなく、不思議を客に示す部分で適切な表現方法を選ぶことのできる人のことなのだと思います。