■ ほめらるるもの、四五日に過ぎず。そしらるるもの、また四五日に過ぎず。

『宇治拾遺物語』


よきにつけ悪しきにつけ、人の噂は長続きしないから気にするな、という文章です。

テレビやインターネットでのタネあかし問題が、周期的にマジック界に議論を巻き起こしますが、実は私はその手の話題にさほど関心がありません。メディアでのタネあかしを根絶することは不可能だと考えていますし、それ以上に見聞きしたタネを、視聴者らが永く記憶に留めることがないだろうと楽観もしているからです。

批判を承知で書きますが、テレビに一度映ったトリックは永遠に実演できないといった悲観論や、タネあかしのWebsiteに万人が注目しているかのような過剰な思い込みは、愛好家ならではの杞憂であるように思います。メディアの影響力が絶大であることは確かです。が、しかしその一方で、人間は記憶に留めようと強く意識し続けない限りあらゆる事柄を徐々に忘れていくこともまた事実。節度のないタネあかしを推奨するつもりはけっしてありませんが、この話題を扱う場合は極論に走ることなく、努めて客観性を保つことが重要だと考えます。

最後に言い訳を書いておきます(汗)。私にとってマジックは単なる趣味に過ぎませんから、タネあかしに対する認識は非常に甘いものだと自覚しています。プロにはまったく違った理屈があるでしょうし、メディアに臨む姿勢も格段に厳しくなるのは当然のことでしょう。