■ 年少他に従い梨栗を愛するも、長成してはすべからく読むべし五車の書。

王安石 『贈外孫』

年少のうちは梨だの栗だのをかじって山野を飛び回るのもよいが、相応の年齢になったら皆、五台の車に積んだほどの書物を読むべきだ。


マジックの幅をある程度以上広げたいと考えるなら、やはり日本の書籍だけでなく洋書をも読むべきだと思います。周囲の愛好家を眺めてみても、洋書を適切に読み込んでいる人はやはり知識量も多く、演技の幅も広いように感じます。

これは「国内の書籍に掲載されている作品を習得しただけでは不十分だ」という意味ではありません。例えば『カードマジック事典』の収録作品をすべてマスターしたなら、演じる楽しみは十分すぎるほど味わうことができるでしょう。ただ、それほどマジックに熱意ある人であれば、すぐに次の作品や手順に食指が動いてしまうことは想像に難くありませんし、そうなったときに、数少ない国内の出版物のみに頑なに固執する理由はないであろうということです。

精緻な挿絵を眺めながら説明文をなぞるにつれて、1つの作品が徐々に全貌を表してくる過程は非常に魅力的なものです。名作・傑作に相対し想像力を駆使してゆっくりとその手順を読み解いていく時間は、客の前で演技をするのと同等、もしくはそれ以上の充実感を与えてくれるはずです。