■ そして、失敗の言い訳をして、かえって失敗を目立たせてしまう、これはよくあること。

シェイクスピア 『ジョン王』


原文は「And oftentimes excusing of a fault / Doth make the fault the worse by th'excuse.」。

マジックを演じている最中の言い訳は見苦しいばかりで一分の得もありません。お金を取っているプロでもない限り、たいていの客は演技の失敗には意外に寛容なものです。むしろその失敗に対して、今日は体調が悪いとか練習不足だといった逃げ口上を聞かされることのほうに、より不快さを感じるはずです。

Magician's Choiceは「これから何が起こるのかを観客は知らない」という利点を最大に生かした効果の高いテクニックです。それと同様に、演者がそうと明言しない限り、失敗が起こったことに客が気づいていない場合もままあるのです。失敗の中には、客に気づかれずに復旧できるものとそうでないものがありますから、いち早くそれを見極め、状況に応じた適切な対応をすることもマジックの腕のうちだと言えるでしょう。

演技の失敗はないに越したことはありません。ですが生身の人間のPerformanceなのですから、ミスを100%なくすことは不可能です。実生活でも「失敗はすばやく回復する」「ミスが致命的で回復できないときには、素直にあきらめて次善の策を練る」というのが常道です。重要なのはそのときの態度であって、言い訳がプラスに働かないこともまた共通した事柄でしょう。