*ふぁきあとあひるがカップル成立している話です。
     同人誌の「ショコラ」のもとネタです。
     チュー注意。


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      『ショコラ』


     あひるは橋の手摺りに足をぶらぶらさせて座っていた。
     足の先には流れゆく川が光を映してキラキラと波動き、日の光が反射して顔に水の模様を照らしだしている。その水面をうっとりとあひるは眺める。水が涼しげな音を立てるのを聞いていると、誘われるようにそのまま飛び込みたくなってくる。
     知らず、だんだんと吸い込まれるように前かがみになって魅入っていると、腰に腕を差し入れられ、引き戻された。
     ひっくり返りそうになった背にしっかりした体があたって止まる。耳に馴染んでるいる声が上から降りてきた。
    「転げ落ちる気か?」
    「おかえり、ふぁきあ!」
     待ち人に振り返り、とん、と橋の上から着地すると、あひるはにっこりと笑った。
    「待たせたな」
    「ううん。町並みや水を見ていたから退屈しなかったよ!でも泳ぎたくなっちゃった!」
     あひるは荷物を抱えているふぁきあの周りをくるくるとまわって隣に並ぶ。
    「まだ、早いんじゃないのか?」
     歩き始めたふぁきあにあひるが両手を差し出した。
    「そう?荷物持つよ」
    「いい。それより目をつぶれ」
    「なんで?」
     ふぁきあの片方の口角があがった。
     こういうときのふぁきあは、なにか企んでいる。表面上はお固い顔をしているのに、実は案外茶目っ気があって気が利いているのをあひるは知っている。
    「待たせたからな。ちょっと土産がある」
    「え!なになに、お土産って!」
     まとわりつく少女に早く目をつぶれとふぁきあは促した。
     ぱたぱたと手を振り回してじゃれていた少女はおとなしく目を瞑り両手を胸の前で組んだ。ふぁきあが紙袋を探る音が聞こえる。すぐにそっとなにかが唇に触れた。
     甘い匂いが鼻をくすぐる。
     パッチリとあひるが目をあけると、ふぁきあがいたずらっぽそうに笑っていた。
    「たまにはな…食べていいぞ」
     目の前に翳されたそれは、丸いチョコレート菓子だった。
    「ほら」
    「あーん」と差し出されたそれに反射的に口を開ける。けれどその菓子はあひるの口よりも大きかった。
    「あ?」
     どうやって食べたらいいか、つまんだふぁきあの指先を口をあけたまま、右往左往する。角度を変えて試みてみるが、どうにもうまく食べられそうにない。
     口を開けたまま困惑しているあひるの仕草を可笑しそうに見てふぁきあは声をもらしたが、すっとあひるの口元にチョコレートをあてがうと、「齧れ」といい結んだ。
     上目使いでふぁきあを覗き込んであひるはおずおずとチョコレートに歯を立てた。思ったよりも柔らかく、歯は簡単に入っていき、チョコレートを割っていく。
     中は生で蜜のようなものがトロリと流れ、ふぁきあの指とあひるの唇を濡らした。
    口に広がっていく甘さにあひるは目を細める。
    「おお〜いしい〜!」
     その顔につられてふぁきあの顔もまた緩む。
    「毎日はだめだが、少しならたまにはな…。多少甘いものはとった方がいいし」
    「ふぁきあは?」
    口をもごもごさせながら、当然残った半分はふぁきあが口にするものと思っていたあひるは首を傾げた。一向にチョコレートを持った手はあひるの前から動かない。
    「おまえのだ」
    「いいの?」
    「土産と言ったろ。お前に買ってきたんだ。お前のだ。」
     口を開けさせるようにさらに近づけた指先があひるの唇に僅かに触れ、ふぁきあの鼓動が跳ね上がる。悟られぬように開いた口に押し込み、指先についた蜜とチョコレートをぺろりと舐めた。
    「ふぁきあも食べればいいのに〜。すっごく美味しいんだよ」
     このおいしさの気持ちを分かち合いたいらしい。もごもごした口を片手でおさえ、くぐもった声で懸命に伝えようとする。
    「すごく甘くて、ちょっと苦くて中の…これなんだろ、蜜みたいなのがオレンジ風味で…」
     説明と一緒に身振り手振りで手がせわしなく振り回された。
     目を細めながら聞いていた少年は少女の顎に手をやり、先ほど口の端からこぼれた液を指先で拭って自分の口に含んだ。チョコとオレンジの味が染み込んでいく。
    「……そうだな、食べてみるか」
     少女が「え?」と言葉をこぼす間もなく、突然拭った口端を舐められ、あひるは奇声を発した。その口もすぐに塞がれる。
    「ん…」
     目を見開いたあひるはゆっくりと瞼を閉じる。軽く触れているようなキスはだんだんと深くなっていった。
    「ん…んう……ふ」
     角度を変え、吟味するようにゆっくりとくりかえし唇を重ねられる。
     ようやく解放したふぁきあが熱くあがった息を吐くと、目の前のあひるの顔は……
      青かった
     すごい勢いであひるはふぁきあを突き飛ばすと、胸を連打し始める。チョコレートが喉に詰まったと悟ったふぁきあは慌てて荷物を放り投げ、あひるを担ぎ上げて逆さまにして背中を叩きまくった。
             


     やっと痞えのとれたあひるは、咳と途切れ気味の荒い呼吸を交互にしながら、涙目でふぁきあを睨みつけた。
     こんな顔をされた日にはもう何を言われても逆らえない。ふぁきあはひどくばつの悪い顔で眉間にしわを寄せて、あひるの沙汰をまった。


     案の定、口に物を入れている時はもう二度とキスはしない、とふぁきあはそれは固く固く誓いをたてさせられた。


                                                〔ENDE〕