1981年以降


1981年

明治バベルの塔(小説新潮3)

 

1982年

エドの舞踏会(週刊文春1/7−10/14)  作者評価:A

しゃべる男(ショート・ショート・ランド2)

八犬伝(朝日新聞夕刊8/30−83・11/16)  作者評価:A

雲南(ショート・ショート・ランド11)

 

1984年

旅人 国定龍次(高知新聞他8/3−85・9/1)  作者評価:B

四分割英雄伝・幸徳秋水→四分割秋水伝(オール読物8)

ラスプーチンが来た(文芸春秋12) *連載分に加筆して刊行  作者評価:A

 

1986年

牢屋の坊っちゃん(オール読物5)

明治十手架(読売新聞夕刊8/16−87・11/7)  作者評価:A

人間臨終図巻(徳間書店9・下巻87・3)  作者評価:A

神曲崩壊(週刊朝日10/3−87・5/1)  作者評価:C

 

1989年

室町少年倶楽部(オール読物1増刊)

室町の大予言(小説新潮3)

 

1990年

婆沙羅(小説現代1−2)  作者評価:A

室町お伽草紙(週刊新潮4/26−91・4/4)  作者評価:A

 

1991年

柳生十兵衛死す(毎日新聞4/1−92・3/25)  作者評価:B

半身棺桶(エッセイ集)(徳間書店10)  作者評価:B

 

1993年

死言状(エッセイ集)(富士見書房11)  作者評価:A

 

1995年

風来酔夢談(対談集)(富士見書房8)

 

1996年

コレデオシマイ(インタビュー)(角川春樹事務所12)

 

1997年

あと千回の晩飯(エッセイ集)(朝日出版社3)


この時期の山田風太郎

 この時期になると小説作品が一気に少なくなるため、十数年の長い時期をひと絡げにすることになってしまいました。この中で時期を分ければ、87年が境目になるでしょう。86-87年の『明治十手架』を最後に「明治もの」は後を絶ち、89年からは室町ものが書かれます。と言っても、『柳生十兵衛死す』を含めても五作と、数は少ないのですが。
 かわってこの時期にはエッセイの仕事が多く見受けられました。また、『風来酔夢談』や『コレデオシマイ』、また関川夏央『戦中派天才老人・山田風太郎』に見られる対談やインタビューも多く活字になりました。
 小説では『エドの舞踏会』が佳作。また『八犬伝』も、山田風太郎の全時期を通じての代表作としてよいものでしょう。現時点での最後の小説『柳生十兵衛死す』も、『魔界転生』以来の柳生十兵衛の登場ということで注目を集めました。
 小説以外の作品として見逃せないものは何と言っても『人間臨終図巻』。923人分の死に際を読むという作業は、読者に未知の体験を与えてくれました。まさに現代の名著と言うべき本。

 90年代に入ってから今に至るまで続く山田風太郎ブームは、数々の著作を復刊・文庫化することになりました。河出文庫「山田風太郎コレクション」全9冊(93-94)、講談社「山田風太郎傑作忍法帖」全21冊(第一期・第二期合わせて。94−96)、廣済堂文庫「山田風太郎傑作大全」(96-97)、筑摩書房「山田風太郎明治小説全集」愛蔵版全7冊、文庫版全14冊(97)などが主なものとして挙げられます。

 現在の山田風太郎は、糖尿病、パーキンソン氏病、眼底出血による視力の低下等、健康についての不安な話を多く書かれていますが、愛読者としては氏の健康がなるべく良好なまま、なるべく長く続くことを祈るのみです。氏の読者としてはさすがに、長生きを無条件に肯定することもできなければ、酒や煙草を止めてくださいと頼むこともできませんから。

 (後記)山田風太郎は周知の通り、2001年7月28日に亡くなられました。構想はできていたという蓮如と八犬士の登場する室町ものはついに書かれずに終わり、『柳生十兵衛死す』が私たちに残された最後の小説となりました。謹んでご冥福をお祈りします。

 

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