ま、またもや・・・。









城戸邸の広間に集う黄金聖闘士12人は心の中でそうつぶやいた。

渡された歌詞カードには何とも意味不明な文が数行書いてあった。
全員が日本語がわかる。
わかるだけに余計やる気がうせる。
「みなさん、ちゃんとマスターしてくださいね。本番はもうすぐそこですよ。」
胸の前でパンと手を合わせ楽しさをかくせない女神。

これをか?
これをマスターして、歌って踊れというのか?!



天まで響け 俺の小宇宙
究極に高まれ 俺の小宇宙

エイトセンシズ目覚めるのは難しいけれど
聖闘士である限り 敗北は許されないのさ
めざすは 打倒 冥王ハーデスだ!!

オレ! オレ! 聖域サンバ!!
オレ! オレ! 聖闘士サンバ!!

襲い掛かるスペクター 強いぞ三巨頭
必殺技で倒しまくろう!

サンバ! ビバ! サンバ! 聖・闘・士サンバ!!

オ・レ!!!




全員が歌詞カードを睨んだまま、言葉を失っている。
とて例外ではなかった。
”こ、これはもしや・・・?今ハヤリの○○○○サンバのパクリでは!!”
「さ、沙織ちゃん・・・?本当にやる気?」
「えぇ!!もちろんです。楽しいでしょう?素晴しいでしょう?
ぜったいヒットしますわ!」
「「「「ひっと?」」」」
悪い予感に、視線が沙織に集中する。
「辰巳の書いた歌詞の素晴しいこと!!あぁ楽しみ!!」

辰巳か!!辰巳さんがこれを書いたのか!!
余計なことをしくさりおって、というボヤキを何とか打ち消す。

「うふふ・・・皆さん”やりたくない気持ち”がバレバレですわ。」
「当たり前です。我々は女神の警護に日本に来たのであって、
こんなバカげた踊りをする為に来たのではありませんぞ!!」
前回のパチンコ事件以来、サガは女神のあやしい提案に誰よりも気をつけていた。
「それに先ほどの”ヒット”とは?まさかまた我々を題材に何か、」
「それは完成した後お話いたします。」

「それに・・・」
キラリと沙織の目が光る。
「ただでやれとは言いません。」
「当たり前だ。タダでなんかやるわけねぇだろ。」
「こら!」
ふてぶてしい態度のデスマスクをシュラがたしなめた。

「もし1番ステキに踊れた人には・・・・」
「「「「ひとには?」」」」

ちゃんと好きなくらいキスできる権利をあ・げ・るっ!うふっ!」
「「「「「「「「「「「よっしゃーーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」」」
「却下っ!!!」
みんなのガッツポーズとの声が重なった。
「沙織ちゃん、いくら沙織ちゃんだってそんな権限あるわけないでしょ!!!」
目を吊り上げてつかつかと突進する。
「やだぁ・・・ちゃんこわーい・・・。」
怖いなんて思っちゃいない、その証拠に目がわらっている。

「誤魔化さないで!」
ちゃんが協力してくれないと、財団の運営にひびくわぁ・・・
どうしましょう?はぁ・・・・。」
「ひびくわけないでしょーー!!」
、アテナの為だ・・・。耐えねばならんのだ。」
「そうだ、もイヤかもしれんが、我々もイヤイヤやるのだぞ・・・。」
「ミロ、さっき”よっしゃー”って言ってたじゃない・・・。」

自分をたしなめる12人をグルリ見回しても、誰一人として
”イヤイヤやる”なんて顔の人物はいなかった。
、あれはあくまで表向き。ポーズなのだ。」
「そうだ。アテナの命令とあらば、”あぁ、やってみたい!”
”早くやりたい!”神の目を欺く、われわれ黄金聖闘士の苦労がにわかるか?!」
「わかるわけない!前回同様私には何の得もないじゃないの!」
キスのためなら、恥さらしなサンバを踊る事も厭わない
すでにやる気マンマンな男たちを睨みつける。
もっともなの意見を、視線を逸らしてかわす12人。
すでにサンバステップを踏み始めている者も数名・・・。

ぱんっ!
大きな瞳を輝かせて沙織は思い付きを提案した。
ちゃん、こうしましょうよ!」
「何よぉ・・・」
「さっきは”好きなだけ”って言ったけど、”1回だけ”にすれば!!」
「しなきゃいけない事にはかわりないーーーーーっ!!!」
「じゃ、ちゃんは踊らなくていいから!!」
「私もだったんかい!!」

「ねっ、お願い。皆のことキライなわけじゃないでしょ?1回くらいサービスしてあげて!」
「その1回がイヤだから、」
「「「「「「「「「「「プリプリプリーーーーズッ!!!」」」」」」」」」」」




結局おされておされて、逆らえず・・・
極めつけにこのひと言。
「神に逆らうのですか?!」


やります。やらせていただきます。喜んで!!





「じゃ、皆さん頑張って下さいねっ。」
「「「はっ!!」」」
仕事に向かう女神をお見送りする黄金聖闘士たち。
「アイオロス、今日はよろしくお願いしますわね。」
「はっ、かしこまりました。」
「ごきげんよう・・・・ふふふっ、誰かしらねぇ、ちゃんにキスしてもらえるのは・・・ふふふっ。」
アイオロスによって開けられたドアを通る女神は、クスクスと笑いをもらした。



「それじゃ、せいぜい頑張れよ!」
「「おう!」」
同僚に声をかけて、女神の後を追おうと部屋を出かけた時
アイオロスはを振り返った。
、誰が優勝しても油断しちゃダメだよ。」
「!」
「男は狼。キスだけですむように、よく警戒しておくこと!
それと、帰ってきたら女神の警護代としてのキス、もらうからね!」
「なっ!」
そう言ってにウィンクすると、風のように去っていった。


やっぱり
黄金聖闘士といえど、男は狼。

恐る恐る後ろを振り返れば・・・・
半分妄想にとりつかれた11人の男たちが

華麗にサンバステップを踏んでいた。


オ・レッ!!











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