この焼け焦げた大地に果てはあるの?
ここはどこだろう?


あぁ・・・夢なんだ・・・。


だって昨日もここに来たもの。
そして気がついた時はベッドによこたわって、自分の部屋の天井を見てるんだわ、きっとまた・・・


「夢じゃないよ・・・」
誰かが私の手を握る。

あれ?
昨日まではこんな子いなかった・・・。
小さな男の子・・・
「君は誰なの・・・?」
金髪の少年は不思議そうに私を見ていた。
私を見つめるばかりで、答える気配はない。


風が2人の髪をゆらす。
こんな所にも風だけはやさしくふくのね・・・

遠くを見た。

「花なんだよ・・・」
年には似あわない、ものを知った瞳
「花なの・・・あなたは。」

意味が・・・わからない。
「わたしは花じゃないよ」

そう言った時
世界が歪んだ。真っ黒な雲が津波のような勢いでせまってくる。
のみ込まれる!!





「いゃ・・・!!」
あげかけた悲鳴を飲み込んだ。見開いた目に天井がうつったから。
「またあの夢・・・」
さっきまで寝ていたというのに、妙に頭が冴えている。

天井を見ながらさっきの夢を反芻してみる
よくよく思い出せば毎日毎日少しずつ変化している・・・
そして・・・

いや夢? 夢じゃないかも・・・
「やだ・・・・」

夢なら、この手の感触は何?!まだ誰かが手をつないでいる!!
「や・・・いやぁーーーーーーーー・・・・!!!」







「気がついたのか・・・?」
少しずつ覚醒するのを自分で感じた。この声の主は・・・カノン?
眠くて目は開けられそうにない。
「カノン、なの・・・?」
「あぁ・・・」
ベッドがきしむ音がした。瞼を何とか持ち上げると、枕元に彼の
姿を見ることができた。
「どうしたのだ・・・?」
「なにが・・・」
心配そうに私をみつめている。
「・・・シュラが悲鳴をきいた。お前以外の小宇宙を感じたので部屋にはいったら、気を失ったがいた。
そしてここにつれて来て今に至る・・・・。」

どうやらここは教皇の間の一室らしい。天井と匂いに覚えがある。
「シュラが・・・。・・・カノンとシュラが昨日の夜の見回りだったのね?」
「何があった?」
「・・・夢をみるの・・・」
瞑っていた目を開けてカノンを見る。
「毎晩か?」
「そう。毎晩同じ。焼け焦げた大地に立ってるの。どこだろうって思いながらずっと立ってる。でも昨日はちょっと違った。」
「どういうふうに?」
「いつの間にか小さな男の子が、私の手を握ってた。で・・・・、言うの。私の事を”花だよ”って・・・」
「花・・・」
「そこで目が覚めたんだけど、手を握られた感触がのこってて、しかもまだつないでた。
その時の悲鳴をシュラがきいたんだね・・・」

は昨日の夜ほどの恐怖は感じていないようであった。
偶然ではあったが、シュラに救われたことで”守られている”安心感をおぼえたのだろう。
「シュラが感じた小宇宙はその子のものなのか・・・?」
「私には、小宇宙はわからないの。」
聖域の住人ではあるが、一般人のに小宇宙は感じることが出来なかった。
「ねぇ、カノン」
「なんだ?」
「今はあの夢を見なくてすみそうなの。ここに、いて?」
「あぁ・・・。ゆっくり休め・・・」
カノンはの小宇宙から疲労を感じていた。
夢が何を意味するのかわからないが、お前が安心できるのなら・・・。
カノンは金色の小宇宙をに分け与えた。


カノンは自分の執務の合間を縫って、何度か私の様子を見に来ていたらしい。
眠りが浅くなった頃合いにタイミングよく誰かが部屋に入って来るのを感じた。
誰かの存在に安心すると、また眠りの世界へと引き戻されていくのだった。

何度かそんな事を繰り返して、眠気が落ち着いた時には夜だった。女官が夕食を運んできた。
”今夜の見回りはムウ様でございます。私もまだ神殿におりますので何か御用があれば、
お申し付けください”そんな内容の事を言って彼女は去っていった。


食事をするために椅子にすわったものの、食欲というものがわいてこない。
さっきから銀色のスプーンをみるともなしにみているだけだ。

(今夜また何かが起こるのだろうか・・・)

少し明るい事を考えてみようとしても、最後には夢のことばかり。
膝に両手をのせたまま止まってしまった自分に気がついたのはノックの音がしたからだった。
「どうぞ。」
ゆっくりと開いたドアから聖衣を纏ったムウが姿を現した。
「食事中でしたか。どうぞそのまま続けてください。って全然手をつけていないじゃありませんか?」
「あまり食欲がなくて・・・」
「いけません。お食べなさい。」
「でも・・」
の小宇宙の弱まり方はあなたが考えている以上に深刻です。
食べられないというのなら、私が食べさせてさしあげましょう。」
そういってフォークに手を伸ばす。冗談とはわかってもさすがに焦る。
「やだ、ムウったら・・・自分でするわよ・・・」
ムウより先にフォークをとると、野菜を一口食べてみせる。
少し安心したように微笑むと、向かい側の椅子に座る。

「夢のことはカノンとシュラからきいています。」
「毎晩同じ夢をみるなんて、変でしょ。しかも見る度に進展がある。」
「昨夜は気を失ったそうじゃありませんか」
「そう。でも大丈夫。・・・大丈夫だけど、ここにいたいな・・・。ここにいれば少しはマシな気がして・・・。」
「守って差し上げます。幸い今夜の勤務は私ですし・・・。安心なさい。」
面と向かって言われると照れてしまうが、嬉しかった。
「ありがとう、ムウ」
食事がおわったことを確認して、彼はでていった。






多くの会話があったわけでもないのに、急に静まりかえってしまう部屋。
寝るには早かったが、ベッドに入って再び天井を見つめる。

私たちは女神を守るが、同時に女神からも守られているのだ・・・。
女神や黄金聖闘士によって護られている聖域にいるのにそうそう悪が入り込めるわけがない。

(私が思っているほど悪い夢でもない・・・?)

そんな事を思いめぐらせているうちに、気持ちの良いまどろみがおそってくる。
の瞼はいつのまにか閉じられていた。










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