『夏祭り』



世界が平和を取り戻し

聖闘士は"伝説”になった


「サガ、急きょ日本へ帰りたいの。手配できて?」

平和になったはずだが

聖域は大忙し


教皇の間には俺とそして教皇代理である双子の兄サガと

日本へ帰りたいと言ったアテナの三人


「アテナ・・・世界は確かに平和になりました。ですが「さっさとなさい」


サガの言葉を遮り手配を要求する

アテナらしくないと言えばそうなるかもしれん


だがきっと何か事情があるのかも

「サガよ、いつもアテナはよく頑張っておられる。たまには故郷を恋しく思うアテナのお気持ちを察してやるのもお前の仕事だぞ?」

「カノン」

俺の加勢でだいぶ有利になるアテナの日本行き


「・・・確かに日頃から頑張っているアテナだが・・・」

「お願いサガ。」

「俺からも・・だ。」


正直うんざりしていた

毎日毎日朝から真夜中過ぎまで仕事の日々に―――

これだけこき使う聖域に

眉間に深い皴を寄せたサガは少し考えた後

「・・・わかりました・・」

本当は何が何でも反対しようと思っていたのかわからないが

”わかった”と言ったサガの負け。

その言葉を聞いたアテナはとても嬉しそうだった

「ありがとう。サガそしてカノン、これで星矢と二人で夏祭りに行けます。」

―――夏祭り?―――



早速旅立つ準備を整えたアテナは護衛であるミロを連れて自家用ジェット機で日本へ帰って行った


それを見送った俺は


双子宮への階段をいそいで下りる

そこで待つおまえのために―――



サガの承諾をもらった後、俺はアテナに聞いてみた。

『ナツマツリとは一体何なんですか??』

『あら、カノン聞いたことがありませんでしたか?』

『はぁ・・・』

は何も?』

『あ・・はぁ。』

『なんですその歯切れの悪い返事は・・・』


は俺の―――妻―――

大恋愛の末の誕生日に結婚した。

そして彼女は聖域へ俺が守護する双子宮で今は俺の帰りを待つ良い奥さん。




日本の話は毎日と言っていい程よくする。

だが愚兄の仕事が忙しいせいで俺までもが執務をすることになり



なかなか長い休暇を貰えずを日本へ連れて帰ってやることもできなかった

最近では話すことも少なくなった・・


だが祭りのことは聞いた事がある

俺と一度は一緒に行ってみたいと言っていた覚えがある

妻の願いは叶えたい



アテナが冷ややかな目で見てくる

バレたか・・?

俺がウソをついていることを・・・



『カノン!!アテナとして命令です!!』


―――と共に日本へ行き夏祭りを楽しんでらっしゃい!!―――



よしっ!!!大成功!

思わずガッツポーズをとる俺にサガの肩が揺れる。



はははっ!!俺の悪知恵はこういったことに使わんとな!!


『聞いての通りだサガよ!アテナの命令だから仕方ないよなぁ?』

『ぐっ!!このっ!!』

全てわかっているサガは頭を抱える

今まで散々新婚生活を邪魔した罰だ!!償いきれない量の罪を背負って生きるがいい!!

『では、一週間よろしく!』


そして俺は急いで教皇の間を出て今我が家である双子宮の前にいる

殺伐としていたこの宮も今ではのお陰で

綺麗になった

花なんか処女宮と双魚宮だけに咲いていると思ったが

今ではその仲間入りするほど立派に咲く季節の花々達。

季節は夏

が日本から持参した

ヒマワリの花


いつも太陽と向かい合うこの花

それはまるでのようだ

まっすぐにいつも俺の方を見ていてくれるから―――


「夕方なのにまだまだ暑いわねぇ〜。ん・・・?あれ?カノン??」

今から夕食の買い物に出掛けるのだろう

準備を整えて出てきた妻は

早すぎる俺の帰りに少々驚いていた

「どうしたの?随分早いわね??」

「あぁ。走ったからな」

「本当、すごい汗」

そう言うと柔らかく微笑み俺の汗を持っていたタオルで拭いてくれた。

キラキラと輝いて見える




違うな・・という"太陽”に惚れた俺が”ヒマワリ”だ

そう思った。

「カノン?」

「あっ・・いや・・その・・だな。」

「?」

「久しぶりに長期休暇をもらえた!」

「長期休暇?」

「あぁ。それでだ、この間言っていた夏祭りへ行かないか?」

「夏祭り?」

はオウム返しのように言葉を返してくる

「ここ最近ずっと缶詰状態だったからな。お前と共にのんびりと羽をのばしたい」

「カノン!!」

喜びを現し飛びつくを俺は優しく抱きとめた

いつも帰りが遅く、たまの休日も双子宮で過ごしていた俺に

は文句の一つも言わなかった

それが俺には救いだったが

それは間違っていた

妻は寂しかったに違いない

だがそれを口にすることはない。

「寂しい思いをさせたな」

「っ!!!」

「許してくれるか?」

そっと体を離し顔を覗きこむ

「うん・・」

真っ赤になるをやはり"太陽”だと思った


「じゃあ、早速日本へ行くか!」

「うん!!」

一週間の滞在を予定に準備を始めその日の晩に俺たちは聖域を出た



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