―――運命―――





ごく平凡な私は


毎日が同じ事の繰り返し


何不自由なく暮らしていて



どこか心にポッカリと穴が開いた感覚だけど



私は今日まで生きてきた。



―――そんな幸せを180度変えることなんてありえない―――


一週間後私は結婚する


周りの皆から祝福を受け


神の前で永遠の愛を誓うの。



それが私の用意された人生の道のりを通過する場所








それでいいのだろうか?





と・・・思うこともなかった。




貴方に出会うまでは・・・・


















「はぁ〜あと一週間でこの居心地の良い我が家ともさよならなんだねぇ〜」


リビングのソファーの持たれながらボソッと呟いきながら


キッチンに立つ母の後姿をじっと見つめる


トントントンッとリズミカルな包丁の音と母の背中を


今更ながらにありがたいと思ってしまった。


「なぁ〜に?ったらマリッジブルーにでもなってるの?」


明るい声が聞こえ振り向く母の微笑みに思わず涙が出そうになった


やだ・・・私何感傷的になってるのかしら・・・・


「ち・・違うわよっ。ただ・・ちょっとだけ寂しいって思っただけよ」

「まだまだは甘えたさんね」


トントントンッ

再び包丁が動き出す


その後ろ姿を見るのが当たり前だった。

私はこの背中を見て育った


そしてお父さんみたいな人と結婚したらきっとお母さんみたいに幸せになれると思っていた


だから私は幼馴染でもあると結婚する。

彼は世間体を気にする所もあるが


私を誰よりも愛してくれている


に・・・違いない。

今更確認とかはしない。だって・・・・私達結婚するんだしね。




「・・・・。」









トゥルルルルルルル



電話のなる音に遠ざかる意識が目覚めた


「あら、誰かしら?」


包丁の音がやみ歩く音が耳に入る


「あ・・お母さん。私が出る」

「あら?そう。じゃあ、お願い」


そう言っている間にも電話はなり続け受話器に手を伸ばす


「はい、です。」

『あぁ、!良かった!!やっと連絡が取れた!』


受話器の向こうから聞こえてくるのは聞き覚えのある声

今考えていた人だった。


?どうしたの?家の電話じゃなくて携帯でも良かったんじゃないの?」

『その携帯にずっと連絡してるのにお前は取らないからだろう??』


あ・・・いけない。私部屋に携帯置きっぱなしだったわ・・・


「ごめんなさい・・・」


『あ・・あぁ。気にするな。それより用事頼まれてくれるか!?』


「用事??」


『あぁ!!今日大事な会議があるんだけどその時に使う資料をうっかりして家に忘れて来たんだ!!

 悪いけど、俺の家まで取りに行って持って来てくれないか!?』


「もぉ・・・仕方ないわね。わかったわ。」


『その書類直接”サガ”って人か”カノン”って人に渡してくれないか!?』


「ちょっ!それはいくらなんでも無理よ!大体そのサガとかカノンって人知らないし!外人!?」


『俺が働いている会社の鬼上司だよ!』


「鬼って・・・じゃあ尚更自分で渡してよ!それに私関係ないし・・・」


『関係ないことないだろう??来週には俺たちは夫婦だ!!なっ!頼むって!両方血を見そうなほど恐いんだよ!』


「(どれだけ恐いのよ・・情けない・・)・・・わかった。そのどちらかに渡したらいいのね」


『あぁ!あと!!”外見は二人とも同じ”だけど気にするな!』


まったく言っている意味がわからず取りあえず受付で聞こうと考えていた。


「今回だけ・・・だからね?」


『悪いな!!』


ガチャンッ・・・・

急いでいるのかいきおいよく電話は切られた


「・・・・。」



〜?君なんて??」


顔を覗かせた母に半分ため息交じりで先ほどの事を話す


君ちょっと抜けてる所があるけど立派な会社に勤めてるんですもの。それぐらいは大目に見ないとね!!」

「そうね・・・じゃあ行ってきます」


「は〜い!気を付けてね!!」


見送る母に手を振り車に乗り込み彼の家へハンドルをまわす



彼は現在一人暮らし


しっかりした性格のくせにたまに抜けた所がある


だから今日も大事な会議の書類を忘れられる命知らず・・・・



彼の家の鍵を開け入った一番始めに目に入った白い封筒



「これだわ・・・・・」


それを手に取り

さっきが言っていた鬼上司の顔を連想させてみる


「ダメだわ・・・ププッ鬼の顔しか思い浮かばない!」


大体鬼ってどこまで恐い存在なのよ。


その人達も人間なんだから取って食いはしないわよ。


「さてと、行きますか」


目指す先は


城戸グラード財団



まるで塔のようにそびえ立つ建物を見上げ頂上が太陽の近くにあるほどそれは高かった。



彼はエリートでここの会社に就職


それでもまだまだ平でこれからが頑張り所ってやつ。


「えっと・・が恐れる鬼上司サガかカノンって人にこれを渡したらさっさと帰ろうっと」


私は能天気にそう考えながら入った









それが・・・その出会いが私の運命を180度変える要素だと知らずに・・・





この入り口を入ると・・・・



まるで別世界に入り込んだみたいに



私が



私ではなくなるの・・・。






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