広いロビーに入り



周りを見渡すけど人は誰も居なかった。


「恐い・・・無人の会社みたいだわ・・・・」


もしかすると受付に人が居るかもしれないから私は取りあえず


そこまで早足で歩いた


案の定人が立っていて


それがすごく嬉しく感じてしまうほど


ここは”無”だった



「あ!あの!!」


「?」


思わず声が上擦ってしまい声を掛けられた受付の人は”?”とした顔をして私の顔をじっと見つめた。



「あ・・・すみません私ったら大きな声で・・・」


物腰が柔らかそうなその女性はニコッと微笑むと


「こんにちわ。今日はどういったご用件でしょうか?」


とても丁寧な口調で発されたその声は


”男”の声だった


「!!」


確かに見た目は外国人の方だと思ったが男性とまでは思えないほどその人は綺麗だった


「えっ!?わわ!私・・・えっと・・・サガさんかカノンさんへこの書類を渡して欲しいとに言われまして・・・」


「そうですか。サガとカノンですね・・・今日は二人とも出勤しています。あちらのエレベーターから150階へどうぞ」


ひゃっ!!150!?本当にここは会社なの!!そんな会社今まで聞いたこともないわ・・・


すごい会社とはからも聞いていたから知ってるし、TVとかでもやってたからある程度は知っていたけど


これはすごいってもんじゃあないわ・・・・


「あ・・ありがとうございます。」


お辞儀をして私はエレベーターの所へ行く


その前にチラリとその男性のネームプレートを見る事は忘れない


”ムウ”って読むのかしら・・・?


とても印象的な麻呂眉を脳裏の焼き付けた私は上へ行くボタンを押す


すぐその扉は開きそこに立っていたのは長身のビシッとスーツを着こなす男性が居た


その人が降りるのを待つ私にその人は不思議そうに声をかけてきた


「乗らないのかね?」


閉じられた瞳のはずなのにしっかりと私の方を見てその人は言うものだから


「は!!はいっ!!」



真の目的が何かを忘れてしまうじゃない・・・・


ここって本当変わってる。



「何処まで乗るつもりだね?」


口調はかなりの高慢だけどそれがすごくあっている感じがした


「すみません・・・150階まで・・・」

その前に私はこの金髪の人に”降りないのかね?”と思ってしまった。


「・・・ふむ。私は上に用があるんでな。君は黄金に用か何かか??」

って!!心読まれちゃった!!


落ち着け私!!たまたまよ!!


「黄金??」



行き成り黄金とか言われてもわからない私にネームプレートを見ると


”シャカ”という金髪の男性は続ける


「あぁ。150階は最上階の一つ下の階でそこには常に黄金が待機する場なのだよ」


「はぁ・・・」


さっぱり話が見えない私はただひたすら話すこの偽釈迦様をじっと見つめながら


あ〜これが"悟り"ってやつかもね・・・と頭の何処かがそう私に伝えた



ようやく150階に着いた私達。ドアが開くとここはまた別世界のように辺りが金一色だった。



「サガとカノンはここを出て真っ直ぐ行った大きな扉が二人の部屋だ。迷うことはなかろう・・・では、私はこれで失礼する」


その金の床を音を立てて歩くシャカ様にあ〜!金を踏むなんて勿体無い!!と思ってしまったけど


「私もここを歩かないとエレベーターから動けないじゃない!!」


と一人で言っても誰も聞いてない・・・よね?


恐る恐る一歩踏み出しシャカ様に言われた通りに真っ直ぐ歩く


床を見ると見事に磨きあげられていて


「はぁ〜!今日スカートじゃなくて良かった・・」


と心底安心した私がそこにはいました。


会社の中のはずなのにそこはまるで日本じゃないみたいで


何処の国にも属していない・・・ちょっと混乱させられそうな空間だった



そのせいで私は真っ直ぐ歩いているつもりがいつのまにか曲がってしまい


迷ってしまった。


「うっそぉ・・・・これって・・・・最悪・・・・かも」



エレベーターまで戻ろうと思っても更に迷い


声を出しても反応はなく


恐怖を感じた




「うそぉ・・・・・・・こんな所で迷うなんて・・・!!」


子供じゃないんだから!!


全面金で仕上げられた150階フロアは来た者に錯覚を思わせる



何処を見ても金・・・金・・金!!!!


「やだ・・・」



その場に座り込み愕然としていた私の耳に声が聞こえる



「ん?どう・・しました?」


低い声で何処か安心できるそれに振り返る


「!!」


「え・・・?」



キラキラ輝く金に負けない程その人は眩しいほど輝いていた。


「泣いて・・・いるのですか?」



「えっ・・・?私が・・ですか?」


そう言われて自分の頬を指で触ると濡れる感覚がわかった



「どうしてここで泣いているのですか?」


その男性はわざわざ片膝をおり私に目線を合わせてくれた


ここの広さに恐怖した



大げさかもしれないけどもう誰にも会えない錯覚と


不安だった心をこの人が助けてくれた



「あ・・・私・・サガさんという方かカノンさんという方にこの書類を渡せとから・・・」



そう言って鞄の中から書類を出す


「それで・・・すみませんがサガさんかカノンさんの所まで・・・・」



そういい終わる前にスッと右手を差し伸べられ


私は自然にその手をとって立ち上がっていた。



「私がサガです。」


「え!!あっ・・・」


ネームプレートに”サガ”


それに気づかなく私はサガさんを探してますと


本人に言っていた



私のドジ・・・・



「じゃ!!こ!!この書類!」


この人がが言っていた鬼上司??そうは見えないわ・・

むしろ格好が良い!背高い!足長い!!



「・・・・」


「っ!」


ジッと見つめる瞳があまりにも真剣で


逸らすこともできないぐらい


時間が止まってしまったんじゃないかと



この黄金に輝く迷路に


永久に迷い込んでしまったんじゃないかと・・・



このまま抜け出なくても



いい・・・




と思ってしまった。




っと!私ったら何を考えているの!!冷静に戻れ!!


「!!!じゃあ!!渡しましたので失礼させていただきます!」


深くお辞儀をしてその場から足早に離れようとした時


「あ!!!・・名前は?」


「?」


真剣な瞳が少し幼さを感じ


その頬が赤くなるのが見えた



振り返りその顔を見た私もなぜかつられるように照れてしまい


きっとサガさんに負けないぐらい赤くなってる



それ以上かも・・・



です・・・。」


・・・さん」



ぎこちなく呼ばれた名前


名前なんて呼ばれなれてるはずなのに


なぜか心が躍るほど


こんな感覚何年ぶりかと思うほど


嬉しかった



「あ!あの!呼び捨てで・・・いいですよ?」



初対面のしかも大人の男性に


自分の名前を呼び捨てにしてもいいと言うなんて


私どうかしてる・・・・


でも・・・この胸の高鳴りは・・・・・



「では・・・


「!!!」



カツカツとゆっくりと近づき


再び手をとられた



先ほどと同じくその行動があまりにきまってるから


拒むことも出来ず・・・


違う拒みたくなかった


だって・・・私・・・・




「運命というものは善者だけに与えられるモノだとずっと思っていた」


瞳を閉じ辛そうな表情・・・今出会ったばかりなのに

全てをわかってあげたい・・・そう思ってしまった。



「これから先もそれはないものだと思っていた」


ゆっくりとその瞳が開かれ私の瞳を捕らえる


「だが・・・私もまだ全てに神に見放されたわけではないそうだ」


「?」


そこから先は全てがスローモーションに動き


サガさんの腕が私の腰へ回され


そのまま強く抱きしめられていた


「あっ!!!」


・・・・今日は初めて会ったはずなのに・・・


 ずっと前から知っていた感じだ・・・私は貴女を・・・・」


「サガ・・・さん」


更に腕の力が強くなり耳元で”サガと呼んでくれないか?・・・さんはいらぬ”と囁かれ


ゾクッと体中を電気が走った


「今日この日まで誰とも出会わなかったのはきっと・・・・貴女と出会うためだったのか?」


疑問系で聞いているのにそれは否と言わせない瞳



でも・・私は一週間後結婚を約束した婚約者がいる・・・


それはかえられない事実


言わないと・・・ちゃんと言わないと・・・私が・・・・


「私・・・一週間後・・・・結婚するんです」



ビクッと抱きしめられている腕が大きく揺れ



ゆっくりと体が離される


「それは・・・真か?」


「嘘なんて・・・言いません」



本当は言いたくなかった



それはなぜ?


それは・・・・




・・私は運命を信じたい」



力強い手が私の肩を抱く



「私は貴女を・・待っていた。突然出会ったばかりの素性の知れない男にこんなこと言われて迷惑だな・・・」


迷惑なんかじゃない!!


でも・・・・


「だが、貴女を・・・好きになってしまった・・・こんな気持ちは初めてだ。」


”もう生きて結構長いのにな”

と照れくさく言う姿が可愛く見えた


好き・・・・私を・・・?


サガの真剣な口調から嘘だと思わない


真実の告白・・・


私もここまでドキドキすることがなかった



でも・・・ここまでトキメキがなかった



「わ・・私・・・」



「行き成り勝手な事を言ってすまない・・・だが貴女を混乱させたいわけではないんだ」



「わか・・ってます」


「・・・・・・」


今度は優しく抱きしめられ



そのたびに生まれる胸のときめきに


くすぐったくなり、いつまでも抱きしめていてもらいたい・・・・・・・そう思った。






でも・・・この手をとってはダメ・・・・




「私・・ご・・・ごめんなさい!!!・・・・」



ッ!!!!」



その腕を振り払い私はその場をあとにした









今日初めてサガに会った




初対面のはず・・・




でも・・・そんなの関係ないわ



これがすでに運命の出会い



サガに恋をしてしまった



それでもこの恋は実らない







だって私はサガとは違う人と結婚する




だから結ばれてはいけないの・・・・










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