ここに来るまで、何度か恋愛をし、その度に失恋した。
 パートナーを失った事を嘆き、落ち込んだ。
 ”こんなに苦しいなら二度と人を好きになったりしない。”そう思ったこともあった。
 
 だけど、
 いつの間にか、ミロ・・・
 あなただけを目で追ってた。
 不思議だな・・・

 このドキドキが恋だと自覚した時、
 心のすべてをあなたに開放したいと思った。

 

ソファに寝転がってそんな事を思い出していた。
っ。」
背もたれの向こうから、ひょっこりと顔を覗かせたあなたが思考を遮る。
「どうしたの、ミロ?」
視線だけ彼へと移した。
、今何考えてたの?」
「なんで?」
「だって、。今すごくいい顔してた。」
「えーーーっ。見ちゃやだよぉ。」
そう言って、彼に背を向ける。

”いい顔してた”などと言われては、ますます話せない。
いや、これはいい発見だったかもしれない。
私は真底ミロに惚れているという。



「こら!何考えてたのか、言えよ!」
正面にまわって、寝ている私に両手を伸ばす。
「はっはははは・・・ぷっ!くすぐったいぃ!!!」
「言えっ!言うまでやめないぞ!!」
あまりのくすぐったさに足をバタつかせる。
いくら身体をよじって避けようとしても、逃げられそうにない。
脇の下をくすぐったり、脇腹をつついたり。
ミロは攻撃の手を休めようとはしなかった。
「ぷ!・・・はははは!!やっ・・もう・・!かんべんしてぇぇぇ!!」
「話すか?!」
「いっ言います!!・・はははっ!!」


くすぐったくて涙がでた。
はぁ、と大きく息をつきながら耳まで流れた涙をぬぐう。
「さぁ、なに考えてたんだ?」
まさか自分の事だとも思わずに、ちょこっとふくれっ面のミロ。
「いやぁ・・・ね・・。今までいろんな人とつきあってきたなぁって。」
言い終わってから横目で反応を窺った。
驚いた顔のあなた。
くるりと背をむけた。



「なんだ・・。聞いて損した。」
そっけなくしてみせるミロが可愛い。
「でも、全部失恋してよかったぁって。」
ミロはまだ私を見てはくれない。
ゆっくりとソファから身体を起こす。
「ミロと出会えたから。ミロを好きになって・・・。」
立ち上がって、背中から抱きしめる。


「ミロなしじゃ、生きられない、こんな私になれてよかった。」


ぺったりとくっつけた頬にミロの体温が伝わってくる。
「ミロとあーゆうコトとか、そーゆうコトする度、実感するの・・・。」
手をわざといやらしくミロの胸にからめた。
「そういう時じゃなくても、ただこうしているだけで、そう感じずにはいられなくなるの。」
押し付けた顔を離して、ミロを覗き込もうとした。
「あんな表情しちゃだめだ。」
ミロも横を向いてと視線を合わせる。
「どうして?どんな顔してたかなんて、自分じゃわかんないよ。」





 まったく。
 はどうしてそうなんだ?
 不安になるじゃないか・・・
 俺のコト考えてくれてたのは嬉しいけど、
 あんな夢心地の可愛い表情したら、他の奴らの目にとまっちゃうだろうが。
 さっきの表情はムウのツボ。
 たまに見せる奔放さはデスマスクのチェックが入る。
 仕事中にする真剣だけど睨むような目つきはサガを捕らえてる。
 全部ダメ。
 だめ、だめ!!



「他のヤツらの前で可愛い顔しちゃダメだからな!!」

本気で言ってるんだぞ!

「してないよ・・・何言ってんの?」
不思議そうに首をかしげる。
「うわっ。それもダメ。」
俺はの腕の中で向きを変え、逆に覆い隠すように抱きしめた。
は俺のもの。」
にはうっとおしいかもしれないけど・・・
目を見て確認する。
「当たり前でしょ?ミロ以外の人のものなんてイヤだもん。
ミロのでいたいよ、ずっと。ずーーーーーーーっと・・・。」




 ミロだけのでいさせてね?
 ミロも私だけのミロになって・・・?
 


「うーーーん・・・ミロの匂いがいっぱい。しあわせ。」
はミロの胸にスリスリと頬をこすりつけた。
「ねぇ?」
「なんだ?」
「ミロの毛布私にちょうだい。」
「なんでだ?」
にっこり笑った口から、またとんでもない言葉が飛び出した。
「ひとりで寝るときもミロに包まれていたいから。」

 そんなふうに言われると深読みしたくなるぞ・・・

「ほう・・・じゃ、自宮に戻らずにここでねればいいだろう?」
こんな感じで、低めの声で囁いてやれば、弱いんだよな。は・・・
「ダメ。寝かせてくれないくせに・・・」
「俺は寝なくても平気だ。」

さぁ、観念するんだ。

「や・だ。」
そう言っては俺の腕をすりぬける。
クスクス笑いながら、寝室へ向かって駆け出した。






布団の下から毛布を抜き出そうと、必死になって頑張ってる。
可愛いやつだな・・。
俺は背後から近づいて君を抱きしめたままベッドに倒れこむ。

枕で頭を叩かれて・・・
わざと痛そうなフリをして・・・
君が困った顔をした瞬間、再び反撃!

きゃーなんて、驚いた声を上げながら
ベッドをおりて次の攻撃に身構える
ふたりしてもう一人の自分と作戦会議・・・



 なぁ、・・・?
 俺、こんな時ふと思ってしまうんだ・・・
 

 仕掛けたイタズラから抜け出すのは構わない。
 でも・・・
 ”俺のもの”・・・・
 この束縛にも似た約束


 そこからは抜け出さないで。





 一生。







                                         終









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