Triumph/トライアンフ |
書籍『カードマジック事典』収録(高木重朗編/東京堂出版)1983 |
Dai Vernon/ダイ・バーノン |
演者は裏向きのデックを両手の間に広げ、客に1枚のカードを引いてもらいます。カードを覚えてもらったらデックの任意の場所に戻してもらい、よく切り混ぜます。デックを2つに分けて、片方を裏向き、もう一方を表向きの状態でリフルシャフルし、何度かカットしながらデックが裏表バラバラに混ざっていることを示します。 ここで、客に覚えたカードが何だったかを質問します。答えを聞き、デックにマジカルジェスチャーをかけてテーブルにスプレッドすると、すべてのカードが裏向きに揃っています。がしかし、中に1枚だけ表向きのカードがあり、それが客のカードであることが示されます。 |
マジックの作品には、いくつかの定型とも言えるプロブレムがあります。“デックを裏表バラバラに混ぜても最終的に同じ向きに揃う”現象を、Triumph現象と自然に総称していますが、言うまでもなくこれは、Dai Vernonの「Triumph」からさまざまなバリエーションが派生し、それらがその後、1つのグループを形成したからにほかなりません。 この作品はプロットの斬新さと完成度の高さで、後年のマジシャンたちのCreativityをおおいに刺激するとともに、Effectを実現するための画期的な技法の考案によって歴史的な傑作となりました。すなわち、ギャンブラーたちのSecret MoveであったPull-through Shuffleと同様の結果を比較的容易に達成するFalse Shuffle、後に「Triumph Shuffle」と呼ばれる技法の考案こそが、この手順を不動の地位に押し上げたひとつの理由だと考えます。 さて「Triumph」にインスパイアされ、数多くのマジシャンが改案を発表しています。中でもDai Vernonの愛弟子、Larry Jenningsが「Triumph」の改案をもっとも多く発表しているマジシャンの一人であることには異論がないでしょう。彼の著書『The Classic Magic of Larry Jennings』だけを見ても、「Jennings on Vernon's Triumph」ほか、4つの作品が収録されています。 Larry Jenningsの作品には、Triumph Shuffleを用いたオリジナルに近い手順もありますが、Zarrow Shuffleを使うことでCuttingを省略するなど、新たなMethodを採ったものも少なくありません。そしてその流れは「Play it Straight(John Bannon)」のような、まったく異なったタイプの作品を生み出すことにもつながっていきます。 「Triumph」は独自のFalse Shuffleによって傑作になり得たと上記しましたが、言い方を変えれば、Triumph Shuffleを用いたオリジナルが非常に高いレベルで完成されているため、以後の改案の多くはそれ以外の技法で切り口を作るしかなかったと見ることもできます。また、これまで挙げた作品はすべてレギュラーデックで行うものですが、Stripper DeckなどのTrick Deckを使用すれば、さらに簡単にTriumph現象を実現できることは言うまでもありません。いくつかの製品が考案・販売されており、「Triumph」に独自のアプローチを試みています。 |
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(参考) |
◆ Book ◆ Lecture Note ◆ Booklet |