Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window/カラーチェンジングアンビシャストライアンフ・ウィズユニバーサルサインドカード・ホーミングトゥスペクテイターズウォレット・アットエニーナンバー・スルーザウインドウ
DVD『The Classic GReeeeN Collection Vol.7』収録(Meir Yedid Magic product)2009
Lennart GReeeeN/レナート・グリィィィィン

長財布を持っている人がいたら演技に協力してもらいたいと告げ、客の一人に演者の横に座ってもらい、財布をテーブル上の邪魔にならないところに置いてもらいます。

青裏のデックをケースから取り出し、カードがばらばらに混ざっていることを示しながら軽くヒンズーシャフルしますが、演者がマジカルジェスチャーをかけると、デック全体が赤裏に変化してしまいます(第1のクライマックス)。

赤裏のデックを両手の間に広げて、客に好きな1枚を抜き出してもらい(仮にハートの8だったとします)。カードの表側にサインしてもらった後に、デックの好きな場所に戻してもらいます。完全に差し入れてしまいますが、ハートの8が一瞬でトップに上がってきます。それが何度か繰り返されます(第2のクライマックス)。

デックを2つにわけて一方を表向きに、他方を裏向きにしてリフルシャフルします。表と裏がばらばらに混ざっていることを何度か示しますが、テーブル上にデックをスプレッドすると、一瞬でカードがすべて表向きに揃っています(第3のクライマックス)。

デックの中ほどに1枚だけ裏向きのカードが残っています。そのカードの表側を見ると、なんとサインのあるハートの8です(第4のクライマックス)。

スプレッドを閉じてデックを取り上げ、ハートの8を抜き出して、裏向きで客に持ってもらいます。少し時間をおいてから表側を見てもらうと、カードがジョーカーに変化しています(第5のクライマックス)。

ふと演者の手元を見るとデックがありません。演者は「客の財布にデックが丸ごと飛び込んだ」ことを告げます。財布を見るとパンパンに膨らんでおり、客は非常に驚きます。演者は財布を開け、デックを取り出します(第6のクライマックス)。

客に、1〜53の間で好きな数字を言ってもらいます。裏向きに持ったデックのトップから1枚ずつ表向きにして、テーブル上にカードを配ります。客の言った枚数目のカードだけを裏向きのまま配り、また表向きに配ってすべてのカードを置いてしまいますが、サインのあるハートの8は現れません(第7のクライマックス)。

おもむろにデックを取り上げ、窓ガラスに向かって投げつけます。窓にぶつかったカードはバラバラと下に落ちますが、窓ガラスに1枚のカードが貼り付いています。さらにそれをよく見ると、なんとガラスを通り抜けて向こう側から貼り付いていることがわかります。客にガラスを触ってその状態を確かめてもらいます(第8のクライマックス)。

窓を開けてカードをはがし、表側に客のサインが書かれたハートの8であることを示します(第9のクライマックス)。

客に財布の形が歪んでしまったことを詫び、演技を終えます。

New Twisted Collectors(Paul Harris)」のように、複数の手順を融合させてさらなる驚きを客に与えようという野心的な試みが、マジック界においては常に行われています。この「Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window」はそういったチャレンジの、1つの頂点を極めた手順だと言えるでしょう。タイトルの「Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window」は少々覚えにくいため、「CCATWUSCHTSWAANTTW」などと略されることもあります。

個性的な複数の作品を組み合わせ、1+1=2ではなく3以上の効果を上げるためには、卓越したセンスが要求されることは言うまでもありません。「Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window」は、歯科医を本業とするカーディシャン、Lennart GReeeeNの理論と技巧の結晶であると言って差し支えないでしょう。

しかし後年の貪欲なマジシャンたちは、この「Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window」にすら満足しませんでした。原案の手順を右手一本で行う「One-handed Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window(OHCCATWUSCHTSWAANTTW)」。また、考案者に敬意を表し、顔を緑色に塗って演じる「Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window put on GReeeeN Mask(CCATWUSCHTSWAANTTWPOGM)」などが発表されましたが、いずれも手順が複雑に過ぎたり現象が不明瞭であるといった理由で、残念ながらオリジナルの「Color Changing Ambitious Triumph with Universal Signed Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window」のよさを生かしているとは言い難いものでした。

唯一見るべきものを挙げるとすれば、「Brainwave Color Changing Ambitious Triumph with UniversalSigned Card Homing to Spectator’s Wallet at Any Number through the Window(BCCATWUSCHTSWAANTTW)」でしょうか。これは演技の冒頭で「ここに一組のトランプがあると想像してください」と客に告げ、イマジネーションの世界でAmbitious CardやTriumph、Homing Card現象などを起こす手順で、財布からデックを取り出すまでの演者の負担を大きく軽減する優れた改案でした。


(参考)

◆ Book
・David Roth「Stand-up Hanging KARATE-Assembly in Bottle with Jumbo Climax」『Expert Coin Magic too much !』(Richard Kaufman/Richard Kaufman and Alan Greenberg)1985
・Larry Jennings「Progressive Oil and Visiting Traveller’s Opener and Reverse」『The Classical Long-Long Magic of Larry Jennings』(Mike Maxwell/L&L Publishing)1986