New Twisted Collectors/ニュー・ツイステッド・コレクターズ
レクチャーノート『ポール ハリス レクチュアー ノート』収録(二川滋夫訳/マジックランド)
Paul Harris/ポール・ハリス

演者はデックから4枚のエースを取り出し、表向きでテーブルに置いておきます。残りのデックを裏向きに広げ、3人の客に1枚ずつカードを引かせます。客にそれぞれ自分が引いたカードを覚えるように言い、それが済んだらデックに戻してもらいます。

ここであらためてテーブル上のパケットを取り上げ、4枚のエースであることを示して裏向きに持ちます。残りのデックは使わないのでテーブルに置きます。

パケットにマジカルジェスチャーをかけて手から手に数え取ると、裏向きのカードのうち、ダイヤのエースだけが表向きになっていることがわかります。その1枚を抜き出し裏向きにしてパケットに戻します。もう一度数えると今度はクラブのエースが表向きになっています。これも裏向きにして戻します。続いてハート、最後にスペードのエースが同様に表向きになります。

エースを1枚ずつテーブルに置きながら、今、4枚のエースが順に表向きになったことを客に確認します。いったんパケットを集めてマジカルジェスチャーをかけ、あらためてテーブルに置いていくと、表向きの4枚のエースの間に裏向きのカードが3枚はさまれており、カードが7枚あることがわかります。裏向きのカードは、先ほど客が覚えた3枚であることが示されます。

Paul Harrisは「Screwed Deck」「Cardboard Conection」など、常識破りとも言える独創的なアイデアにもとづく作品を多数発表したマジシャンです。しかし、カードを折り曲げたり破ったりするEffectにその特異な才能を見せるばかりでなく、複数のスタンダードなプロットをミックスして自分流にアレンジすることにも優れたセンスを発揮していることを、この作品から窺うことができます。

Twisting the Aces(Dai Vernon)」はそれ自体シンプルで完成度の高いトリックですが、他に与えた影響の大きさという点でも特筆すべき作品です。多くのマジシャンがそのプロットを取り入れ、個性的な作品を発表しました。この「New Twisted Collectors」もそのひとつで、タイトルどおり、Collectorsプロットの手順を行う際に、使用する4枚のエースで「Twisting the Aces」の現象をも実現するという手順です。

さて、Collectorsプロットの多くの手順では、完成形の状態を整然と示すことに力点が置かれます。その意味で、客の眼前で一風変わったカードのディスプレイを行い、Multiple Sandwichの状態を作り上げる「New Twisted Collectors」のクライマックスは完成度が低いと考える向きもあります。しかしこのように複数のプロットを融合させる試みの場合、手順全体から歪みや余分を削り取っていく作業が特に重要になりますから、Paul Harrisの考案したクライマックスの表現方法を私は高く評価しますし、このディスプレイによって作品の効果はいささかも損なわれていないと考えています。


(参考)

◆ Book
・Dai Vernon「Twisting the Aces」『カードマジック事典』(高木重朗編/東京堂出版)1983

・Delek Dingle「Collectors」『カードマジック事典』(高木重朗編/東京堂出版)1983