Stargazer/スターゲイザー
L.B.Magic Englandより製品として発売
Alan Wong/アラン・ウォン

演者は色違いの2本の輪ゴムを取り出し、客に示します(説明の都合上、赤と青の輪ゴムとします)。両手の指先に2本をかけ、あやとりのように絡めて星の形を1つ作ってみせます。
 さらにあやとりを続け、大きな青い星型の中に引っかかるようにして、ひと回り小さな赤い星がある状態にします。
 輪ゴムをゆっくりと指からはずすと、青い輪ゴムはふつうの丸い形をしていますが、赤い輪ゴムは先ほどの形を記憶したかのように、星型のままになっています。

輪ゴムは、Close-upに用いられることも多い、ごく日常的な素材です。デックなどと組み合わせずに輪ゴムだけでマジックが演じられる場合、貫通や復活がポピュラーな現象ですが、これは一風変わったテイストの作品と言えるでしょう。
 仕掛けのある輪ゴムを使ったマジックには、他に「Flash Link/Linking Stanley(Michael Weber)」などがありますが、クライマックスで輪ゴム自体の形が変わってしまうという現象は、きわめて珍しいのではないでしょうか。

上記Effectに若干の補足をしておきます。最初に示される星は、2本の輪ゴムでひとつの星型を作ったものです。ですから星の一部に赤い部分があったり青い部分があったりという状態です。
 ふたつめの美しい二重の星は、赤の輪ゴムで、一般に一筆書きされるような星形を作り、それが指先にかかった青い輪ゴムを内側に引っ張って結果として青い輪ゴムも星の形となっているというものです。赤い輪ゴムは指には触れていません。

このマジックは、あやとりのように星型を作っていくハンドリングがきわめてクリーンで、クライマックスの直前で演技のテンポが変わるようなこともありません。最大のDirty Workは演技が始まったときに、すでに終わっているからです。クライマックスに向けて、重要なGimmickをそれと知られないように客の目に触れさせる場合には、注目を集める一段階前に道具を登場させ、それを使って別のマジックを演じたりする方法がしばしば採られます。この「Stargazer」の場合も考案者のAlan Wongは、これ単体で演じるのではなく、まず「The Crazy Man's Handcuffs(Michael Ammer)」などを演じてから、この手順に入ることを勧めています。

ちなみに「Stargazer」とは「星を見つめる人・天文学者」という意味ですが、転じて「夢想家・空想家」という意味もあります。


(参考)

◆ Lecture Note
・Michael Ammer「The Crazy Man's Handcuffs」『The Crazy Man's Handcuffs』(Magic City-Paramount)1989

◆ Booklet
・Michael Weber「Flash Link/Linking Stanley」『Richard's Almanac日本語版 特別増刊号』(安崎浩一訳/マジックランド)1992