Joking Illusion/ジョッキング
マジックランドより製品として発売
Bernard Bilis/バーナード・ビリス

演者は青裏のパケットを取り出し、1枚ずつ手から手に数え取ってその都度表側を見せ、4枚のジョーカーであることを示します。そのうちの2枚を表向きでテーブルに置き、残った2枚は裏と裏が接するように向きを変え右手で持ちます。

ここで演者はSnapping MoveというFlourishを行います。これによって手に持っている2枚のカードが打ち合わされて「タッ!」という高い音が聞こえ、裏の色が赤に変化します。テーブルのカードを裏返してみますが、こちらは2枚とも青裏のままです。

今、青裏が2枚、赤裏が2枚という状態です。4枚をいったんまとめて持ち、あらためて赤裏の2枚を表向きでテーブルに置きます。手に残った2枚の青裏カードでSnapping Moveを行うと、そのうち1枚だけが赤裏に変化してしまいます。これに同調したように、テーブル上のペアも赤/青になっています。

テーブルのカードを取り上げて再び4枚をまとめ、今度は赤/青のペアを表向きにテーブルに置きます。手に残ったペア(赤/青)でSnapping Moveを行うと2枚が赤裏に変化します。テーブルのカードは2枚とも青裏に戻っています。

最後に、手に持っている2枚の赤裏カードでSnapping Moveを行うと2枚の青裏に変化します。4枚がすべて青裏のジョーカーに戻ったことを示して演技を終えます。

星の数ほど存在するであろうColor Changeの手順の中でこの作品が一段抜きん出て見える理由は、1つに、一方のパケットが他方に影響を与えながら現象が発生する点、そして何よりSnapping MoveというFlourishが効果的に用いられているためだと思われます。Flourishを不用意に手順に持ち込むと、ときとしてそれ自体が強い主張を持つあまり結果的に作品の調和を崩してしまうことがあります。この「Joking Illusion」のようにFlourishが必要不可欠な技法を兼ねて組み込まれ、なお手順の中で独立した魅力を持ち続けている例は稀なのではないでしょうか。

Wild Card(Peter Kane)」が広く一般に受けるディーラーズアイテムであるのに対し、この「Joking Illusion」などに見られるバックの色の変化は、よりマニア好みの趣向であると言えるでしょう。また「Razzle-Dazzle(Nick Trost)」について述べた際に「パケットトリックの手順では、裏面の色が何種類かに変化するMultiple Color Changeの類型が確立されているように思う」と記述しましたが、この作品はそれとも違い、きわめて単調な繰り返しに現象を限ることで、完成度の高い小品としてのまとまりを得ている作品だと考えます。

添付の解説書には補足として別のエンディングも紹介されています。上記手順の後、客にカードを選んでもらうとその1枚だけが赤裏になっており、同時にすべてのカードを手渡して調べさせることが可能になるというものですが、しかし、これは場合によっては蛇足だと感じます。前述したように、この作品は現象の単純化こそが魅力であると考えるからで、終盤において突然Take One Card Trickの要素が現れる必然性は低いように思います。


(参考)