The Limited Edition/リミテッド・エディション
 
Gordon Bean/ゴードン・ビーン
Larry Jennings/ラリー・ジェニングス

演者はカードケースから、数もスートもばらばらの6枚のカードを取り出します。表を客側に向けてファンに広げ、心の中で1枚のカードを思ってもらいます。この間、演者は横を向き、客の動作を見ていません。客がカードを覚えたらいったんファンを閉じ、パケットを軽くシャフルします。

「カードのイメージが心から薄れていくと、パケットからもカードが消えてしまう」ことを伝えます。パケットを裏向きに広げると、裏がブランクになっているカードが1枚あります。そのカードをファンから3/4ほど引き出し、ファンを表返して同じカードの表側もブランクになっていることを示すと、残りの5枚はすべて普通の状態で、その中に客のカードはありません。心に思っただけの客のカード1枚のみが、両面ブランクに変化してしまったのです。

タイトルの「The Limited Edition」は「限定版」という意味。「白くなったカードは使えないので、今度見せるときには5枚で演技しなければならない。演技の回数に制限のあるマジックだ」ということでしょうか。上記が解説書にある基本手順ですが、ブランクになったカードをパケットから完全に抜き出して、両面を示すことも可能です。

客の選んだカードが現象の対象となるマジックは多くありますが、このパケットトリックは、心に思っただけのカードが変化するというものです。ブランクカードになることも不思議ですが、マジシャンがいかにして客の思ったカードを知り得たのかという疑問が、この作品の中心となる部分でしょう。

Larry Jenningsは「Princess Card Trick(Henry Hardin)」の改案として、客の覚えたカードがポケットに通う「The Little Prinsess」「Princess in Waiting」を発表しました。「The Limited Edition」は、この種のプロブレムに対する、Gimmicked Cardを用いた非常に巧妙なアプローチと言えるものです。

【追記】
さらに凝ったクライマックスを追加した「The New Limited Edition」が、2004年に製品として発売されました。


(参考)

◆ Book
・Larry Jennings「The Little Prinsess」「Princess in Waiting」『The Cardwright』(MIke Maxwell/L&L Publishing)1988
・Larry Jennings「Card to Pocket Princess」「The '65 Card Staggerer」「Reconstructing the Professor's Princess」『Jennings '67』(Richard Kaufman/Kaufman and Company)1997