■ 「3 Fly」プロットの流行を考える ここ数年、コインマジックの世界で「3 Fly」プロット(注1)に対する注目が高まっています。DVD『COINvention』『New York COIN Magic Seminar』でも、複数のプロマジシャンによる演技と掘り下げた議論が収録されており、その流行ぶりが伺えます。 「3 Fly」の最大の魅力は、古典作品が持つ重厚さを潔く脱ぎ捨てた、その「軽さ」ではないかと私は考えます。Sol StoneやGeoffrey Latta、David Rothらの演技によって定着したクラシックスタイル、すなわち「クロースアップ・マットに並べた4枚のコインを、端から順に取り上げて左手に握り〜」という様式を飽きるほど見てきた多くの演者にとって、立った姿勢で行うシンプルなFingertip Coins Acrossが非常にクリアで新鮮な印象を与えたのではないでしょうか。初期のGary KurtsのPerformanceなどが、その萌芽だったように思います。 また、観客の目には映らない違いとして、「3 Fly」プロットに用いられるSecret Moveは、直接的であるがゆえに難易度が高いように感じます。近年、Subtltyでは越えられない壁を、Sleightで突き崩す野心的な試みが、多くの(たいていは若い)マジシャンによって行われています。「Asher Twist(Lee Asher)」などに見られるプロブレムをダイレクトに解決しようとする姿勢は、強引さよりもむしろ爽快感を伴って愛好家に迎えられていますが、そういった志向が「3 Fly」の流行にも投影されているのではないでしょうか。 「3 Fly」プロットは一過性のブームではなく、今やコインマジックの分野に確固たるカテゴリを築きました。しかしそれは脈々と演じ続けられてきた従来の作品を駆逐するものではありません。愛好家としてはコインマジックの幅が広がり、より多様な演技が楽しめるようになったことを喜ぶべきでしょう。 ---- (注1) (参考) |