この焼け焦げた大地に果てはないらしい
そしてはじまりも・・・

今日ははじめから夢だってわかってる
何でだろう・・・


気がつけばいつもここにいて
ここにいる理由も、どこなのかもいつなのかもわからない

ここは過去?現在?未来?
ここは世界のどのへんなのだろう?

夢の中とはいえこの場所しか知らない
夢のなかとはいえすべての感触があまりにリアルだ・・・

だとすれば
いまは”いつ”なんかじゃなく”今”で
ここは”どこ”なんかじゃなく
”世界のすべて”なのかもしれない・・・・・


後ろに気配を感じて振り向く
「戻ってきてくれたんだね」
手をつないでいることに気がつく
「気がつくとここにいるだけなの・・・」
「そんなこと言わないで、あなたは戻ってきたのだから」
すべてを知っている瞳
「君が私を呼ぶの・・・?」
「あなたは花なの」
外見は幼い少年なのに
その瞳には長い年月の色がある
「こっちにきて・・・?」
金髪の少年は静かにわたしを導く
真実へと・・・

焼け焦げた大地は平らだと思っていた
だが歩いてみると緩やかな起伏があるのがわかる
「あそこをみて・・・
彼が指差す先には
見える範囲では一番高く盛り上がっている場所で
頂には
焼け焦げた2本の木がある
どうやらそこまで歩くらしい

「前にここで聖戦がおこったんだ」
手をつないだまま歩き続ける
「その時までは美しかった大地もこんなになってしまった」
石を踏んで足が痛くならないように
「失われたのは風景だけではなく」

もうすぐ頂につくのだろう
つないだ手が力強く私を導く
「あなたの記憶も」

起伏が緩やかになった
「私の身体と共に、の記憶も消滅してしまったの」


「え・・・?」
ただ頭の中を通過していくだけの言葉が、初めて耳にとまった気がした


2本の木の間にたどり着いた時
すべてが変化しだした










シャカとの出会いから美しい風景が失われた
あの瞬間まで
欠けていた記憶が光の速さで
頭の中を通りすぎてゆく






沙羅双樹の園
シャカと私はそこで出会った・・・

星降る夜に
を愛している」
シャカから愛をもらい、私もそれに応えた・・・

「いつかこの沙羅双樹の下で私の魂は消滅するのだろう。
だが、この木の下で、私の魂は高まるのだ。
、君の愛によって・・・」
はじめてシャカの瞳の色をみた・・・

「君は、花だな・・・・」
ふっと笑ってそんなことを言った
再びシャカの瞳の色をみた・・・

聖戦がはじまる予感さえなかった
そんな時の2人の記憶




沙羅双樹の園
シャカはそこで姿を消し
聖戦後
女神によって甦った時

すでに彼は想いを封印していた
シャカ自身がその事に気づかないほど静かに

少なからずを傷つけた聖戦
をひとりにした聖戦

シャカにそんな気持ちの揺れが存在するというのなら
後悔  罪悪感?






少年は言う
「私はシャカの封印された感情・・・」
「私は・・・?」
「あなたはの欠けた記憶・・・
シャカが消滅した悲しみが、あなたの感情を一時的にでも支配したから・・・」

「思い出してくれた・・・?」
無言で頷いた
少年は微笑んだ
「今でも・・・を想っている」
「わたしも・・・シャカ、あなたへの想いが消えることはない・・・」
外見は少年だった
でも私にはその瞳であなたがわかる
「あなたを失った悲しみだけで、記憶を手放してしまったなんて・・・」
「封印を解きたい・・・」







焼けてしまった沙羅の樹を懐かしく見上げた


お互いに愛した事は忘れてしまっていても
愛し合った事実は決してなくならないように・・・


焼け焦げてしまっても
沙羅の樹はここにある・・・

「また・・・あなたとともに生きたい・・・」
「私も・・・」




「沙羅双樹をもとにもどして・・・」
藍の瞳の少年は優しく微笑む



「あなたは花だから・・・」

優しい風が吹いた




「どうすれば沙羅双樹の園は
その命を取り戻すの?」
「難しくなんかない・・・あなたが祈れば風がおこり、此処に新しい命を届けてくれるはず・・・
沙羅の樹の力があれば、私は彼の中へ戻り封印をとくことができるから・・・」

誰よりも祈る気持ちはもっている
幼いシャカにほほえみかけた












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