最近予感が確信へとかわりつつある。
決して自惚れなんかじゃない。
”そんな事あるわけないじゃない”と
自分の勘違いと笑い飛ばしてしまいたい。


2人は仲のいい友達だったはずなのに。
いつからだろう?
ミロの瞳に友情以外の色をみるようになったのは・・・

ミロの真剣さがこわい・・・
私にはカノンがいるってわかっているはずなのに


 いつか友達にも戻れない決定的瞬間が来るかもしれない・・・


「カノン・・・」
 あなたのことだけ考えてたいよ。
 どんな事があろうとカノンしかいないって
 強く強くおもっていたはずなのに

「ミロ・・・」
 どうしてミロのことを思い出してしまうの?


真夜中
数時間も前からベッドに身体を横たえて休もうとしているのに、
は眠くならなかった。
「あーーっ!!何で寝れないのよ?!」
そんな理由は明白だ。ミロの事が頭から離れないからだ。
はカノンとつきあっている。
だからいくらミロが”好き”と想ってくれようと、つき合うことはできない。

「はぁ・・・」
何度目になるのかわからないため息をつく。
「どうしよう・・・」
は窓の外の月を見つめた。
こんな胸の内を知っているのはお月様だけだとは思う。


 人に”好き”って想われるのってこんなにつらかったっけ・・・


そんな事を考えながら、月を眺めていたが
しばらくして目を瞑った。


 悩みすぎるのはやめよう。夜は何でも悪いほうに考えがちだから


ミロとの関係はまだ方向を修正できるはず。
彼の気持ちに気づかない振りをしていれば・・・



強引に結論を導くと、にようやくまどろみが訪れた。
瞑った目が眠りをよんだ・・・。




翌朝
寝るのが遅かったわりに、いつものように目が覚めた。
昨夜散々悩んだわりにすっきりとした朝だった。


 やっぱり夜ってろくなこと考えてないんだ。


まだ好きと言われたわけでもない。友達の雰囲気を前面に
出していれば、大丈夫のような気がした。

「今日も頑張りますか!」
今日もいつものように、サガの補佐という仕事がある。
は服を着替えて、朝食の準備をし始めようとした。
ふと留守電のランプが点滅している事に気がつく。


 寝る前はついてなかったから、夜中に電話きたんだ。
 気がつかなかった・・・


入れたての熱いコーヒーを片手に再生ボタンを押す。


 誰からかしら?サガかな?仕事にミスでもあったかな?


そのぐらいの気持ちでボタンをおした。
だが、メッセージを聞いたは、その場に立ちつくすしかできなかった。

?ミロだけど・・・。夜中にゴメンな・・・と・・・」

言い出しにくい事のように、長い沈黙が続く。
「・・・急で悪いけど・・・明日というか、今日の執務がおわった後会えないか?
・・・帰りに天蠍宮に寄ってほしいんだ・・・。
少しでいいから時間をくれ。待ってるから・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃ・・・。」


言葉と言葉の間がとても気まずい。
沈黙の中に、本当に伝えたい言葉が溢れているように思えて。

 どうしよう?行くべきじゃない。というか、会いたくない。
 でも断ったら・・・ミロにバレてしまう。
 私に対するミロの気持ちを知っているということが・・・



ソファに座って温くなったコーヒーをぼんやりとながめる。
会ってみるまではどうしようもないが、心のモヤモヤは少しでも解消しておきたい。
いや、電話をかけたところでますます憂鬱になるのはわかっているのだが、
受話器を手に取ってしまった。

呼び出し音がする。
はミロに出てほしい気持ちとそうでない気持ちの間で揺れながら、つながるのを待った。
音がきりかわる。

「もしもし・・・?」
ミロの声だ。つながってしまった。
「もしもし?だけど・・・」
?・・・おはよう・・・」
「おはよう・・・」
短い沈黙ができた。お互いの心の内がわかるだけに、
なかなか次の言葉が出てこない。
「あの・・・ミロ・・・。」
「ん・・・」
いざ電話をかけたものの、何と切り出していいのかわからなくなる。
「あの・・・留守電きいたんだけど・・・」
「ん・・・。」
「・・・会いたいなんて・・・どうして・・・わたし」
に会いたいから。それだけの理由じゃダメ?」
きっぱりとした口調。ミロはもう、友達という仮面をとってしまったように感じる。
「ダメじゃないんだけど・・・」
「今日は時間がない?」

 会っても、あなたの想いにはこたえられない・・・。

さすがに言えなかった。

「そんなんじゃないけど・・・」
「天蠍宮でまってる。」
「・・・・わかった。じゃ・・・」
「じゃ、また。」

受話器を置くと、はその場にじゃがみこんだ。


 カノン!
 早く帰ってきて・・・お願い・・・!


カノンに何をしてほしいわけでもない。
ただ、一刻も早くこの出来事を忘れてしまいたい。
カノンだけを見つめて、見つめられて
それだけの世界にひたって忘れてしまいたい。

締め付けられるような苦しさをは一人ではどうすることも出来なかった。






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