作品・や行



柳生十兵衛死す 作者評価:B

 柳生十兵衛三部作の掉尾を飾る作品。また、現時点においては山田風太郎最後の小説でもあります。
 柳生十兵衛がのっけから死んでいるという書き出しによる謎の提示、室町の柳生十兵衛と元禄の柳生十兵衛が夢幻能の力によって「中身だけ」時代を往還するという奇想は確かに風太郎的想像力の賜物です。しかし、この作に対する作者の評価は些か辛いようです。「しかし書くには書いたけど、何となく迫力がないね、『魔界転生』なんかに比べると」(『東京人』所収のインタビュー)
 『魔界転生』と比べれば大抵の小説は迫力がないのは当たり前なのですが(笑)。しかし、『魔界転生』において物語のヒーローとしての機能を蕩尽してしまった感のある柳生十兵衛が、また同じように磊落かつ爽やかな剣士として現れることができないのは確かなことなのです。この辺りのことは金井美恵子のエッセイがよく指摘しています。
「そして、十兵衛の小気味良い無邪気さと無垢さを、いささかグロテスクなまでのがさつさに平然と変化させる山田風太郎の書きぶりに、物足りない思いを持つ十兵衛ファンもいるかもしれないのだが、しかし、伝奇作者である馬琴の偉大さと滑稽さを悲哀を込めて書いた山田風太郎であれば、自身の小説の英雄的主人公を三十年近い歳月の後に再び登場させる時、ヒーローの剣の無垢さと無欲さを悲劇として終わらせず、一種皮肉な調子で書く以外になかったことは当然のことだろう」(『本を書く人読まぬ人 とかくこの世はままならぬ PARTU』所収の書評より)
 とは言え、小説全篇は山田風太郎以外にない明晰かつ練達の語り口で語られ、物語の面白さも次元の違いを感じさせます(何と言っても「足利天皇」を題材に選ぶセンスがたまらない)。決闘シーンがいずれも妙にあっけないのもこの際よしとしてしまいましょう。
 この作品は
富士見時代小説文庫で入手できます。

柳生忍法帖 作者評価:A

屋根裏の城主[青春探偵団] 作者評価:B

山田真龍軒

 廣済堂文庫『江戸にいる私』に収録。

ヤマトフの逃亡

 河出文庫『伝馬町から今晩は』、廣済堂文庫『ヤマトフの逃亡』に収録。

山屋敷秘図

 廣済堂文庫『売色使徒行伝』に収録。

山童伝

 廣済堂文庫『長脇差枯野抄』に収録。

 



幽霊御入来[青春探偵団] 作者評価:B

幽霊船棺桶丸

 廣済堂文庫『死なない剣豪』に収録。

雪女

 蒼白い美貌の絵師夫婦(SMの関係にある)に、見たら呪われると伝えられる「雪女」なる一幅の絵という古風な設定。絵師の妻が人知れず失踪した直後、女中のお絹がうわごとを言いながら病死する。なにか事件が起こっているらしいのだが、いったい何が起こっているのか。
 この作品のポイントは、最後まで「事件の実体は何なのか」がはっきりしない点にあるのでしょう。いや、一応これは絵の窃盗事件として落とされているのですが、どうも釈然としません。絵師の妻であるお千恵さんはいったいどうしたのか、「同時幻覚」あるいは「催眠術」の産物として片付けられた「雪女」はいったい何なのか等、中途半端に描かれた部分が多いのです。どうもよくわからない作品です。
 この作品は、
出版芸術社『怪談部屋』、角川ホラー文庫『跫音』に収録されています。

ゆびきり地獄[ありんす国伝奇] 作者評価:C

 



妖剣林田佐文

 廣済堂文庫『切腹禁止令』に収録。

妖説赤星十三郎[白波五人帖] 作者評価:B

妖説太閤記 作者評価:A

妖説忠信利平[白波五人帖] 作者評価:B

妖説南郷力丸[白波五人帖] 作者評価:B

妖説日本左衛門[白波五人帖] 作者評価:B

妖説弁天小僧[白波五人帖] 作者評価:B

妖説忠臣蔵(短編集) 作者評価:C

この短編集は集英社文庫から出版されています。

妖僧

 廣済堂文庫『長脇差枯野抄』に収録。

妖瞳記[妖異金瓶梅] 作者評価:A

横浜オッペケペ[明治波涛歌] 作者評価:A

 河出文庫『明治波濤歌』に収録、また筑摩書房より出版。

夜ざくら大名[ありんす国伝奇] 作者評価:C

夜よりほかに聴くものもなし 作者評価:A

 単行本は廣済堂文庫より出版。

 


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