2002年6月
- The scissors in the Cyber-world(2002/06/26)
日本最大級のBBS集合体として、1600万ページビュー/日を誇る「2ち
ゃんねる」。インターネットに親しむ人間なら、アクセス経験の有無はと
もかくとして、1度はその名前を耳にしたコトがあるだろう。
様々なカテゴリーの中に設けられた数多の「板」で、日々種々雑多な意
見が交わされている。恐らく、どんな人間でもひとつやふたつは自分の趣
味・嗜好、あるいは職種等にヒットする板があるはずだ。
そして、そのあまりの情報量の多さと、独特の雰囲気も相まって、一旦
ハマるとなかなか抜け出せずに「住人」となってしまう人間も多数存在す
る。
だが、その「住人」たちの何割かは、「2ちゃんねる中毒」となってし
まい、「社会不適合」となってしまう者もいる。あまつさえ、犯罪(ある
いはそれに類する行為)に手を染め、裁判の被告や刑務所の囚人となって
しまうケースすらある。
今回は、オープン以来の3年間で、インターネット社会(と、それを取
り巻く我々全員)にさまざまな印象と影響を及ぼした「2ちゃんねる」に
ついて触れてみる。
世間に「2ちゃんねる」の存在を知らしめたのが、2000年の5月に発生
した『西鉄バスジャック事件』であるコトは、衆目の一致するところだ。
この事件の犯人(匿名が基本の2ちゃんねるで、わざわざ「ネオむぎ茶」
というハンドルを名乗っていた)が、犯行直前に「ヒヒヒヒヒ」という意
味不明な呟きとともに立てたスレッドのおかげで、2ちゃんねるは一気に
世間にその存在を知られるコトとなった。
ただ、それは同時に、
「2ちゃんねる=犯罪者の巣窟(あるいはアングラ)」
という、恐怖と憎悪に満ちたステレオタイプが、全ての人に植え付けら
れた瞬間でもあった。
実際、この印象ばかりはどうにも致し方ないところであろう。この事件
以降も、2ちゃんねるはさまざまなニュースで、悪印象を社会に対して与
えてきたのだから。最近では、福岡在住の男が「ペット大嫌い板」で猫の
虐殺画像を堂々アップローダーに晒して逮捕された事件が記憶に新しいと
ころである。
他にも、DHCや日本生命が、2ちゃんねるのスレッドを「誹謗中傷・営
業妨害」として、管理人である西村博之氏を訴えたり(特にDHCとは現在
リアルタイムで係争中らしい…)、世田谷の宮沢さん一家惨殺事件の犯人
は実は2ちゃんねらーだという噂が流れたり(これは事実関係不明)、こ
とほどかように、2ちゃんねるはいつも好ましからざるニュースのソース
として、世間をにぎわして(と言っていいのだろうか…)いる。
実際、本サイトを訪れてくれる人はほとんどがまっとうな人ばかりとい
うコトもあり(まっとうでないのは管理人である俺だけという噂^^;)、
2ちゃんねる住人は皆無だ(「隠れ」はいるかもしれないが、そうかどう
かは知る由もない)。近しいネット友人からも、2ちゃんねるに対する好
印象の声は全く聞かれない。
かくいう俺自身、ほのぼの系のアスキーアートに魅了されて、現在では
「モナー板」常駐のROM専住人ではあるが(自爆)、2ちゃんねる全体に
対して、決して良い印象を持っているわけではない。
『祭り』と称される、他サイトへの集団荒らし行為や住人同士の激しい
煽り合い・罵り合い、エロや虐殺を描いた下劣なアスキーアート、偏見と
憎悪にあふれた差別的な内容のレス…、匿名BBSであるがゆえの醜い部分
は、まさにインターネットの「闇」を白日のもとにさらけ出していると言
えるからだ。
だが、それだけが2ちゃんねるの正体ではないという点もまた事実であ
るのだ。
今回のオピニオンを書くにあたり、いくつかの板を試しにウォッチして
みた。全部などフォローしきれるはずもないので、下記の各板でそれぞれ
2〜3のスレッドを流し読みしてみた。
●材料物性板
●メンタルヘルス板
●神社・仏閣板
●生活全般板
●UNIX板
●メガネ・コンタクト板
●地方自治・知事板
全体的にすさみ気味のスレッドを有する板もあったが、いくつかは住人
同士の間でもまっとうなやりとりがなされていて、門外漢の俺ですら「有
意義な情報」であると思わされた。
全てが荒れている板ばかりだったとしたら、これほど多くの人間の支持
を得るコトは恐らくないだろう。板とスレッドさえ選べば、テレビや新聞
では入手困難な情報(しかも高い鮮度と有益性を持った)を手に入れるコ
トだって可能なのだ。
そしてそれは、裏を返せば「ちゃんとした情報を提供してくれるまとも
な人間も、2ちゃんねる住人の中には確かにいる」というコトでもある。
ただ、全体の印象はやはり「近寄るべからざる場所」というモノである
のはどうしようもないだろう。先月のネタにも通じるところがあるが、や
はり「悪貨は良貨を駆逐する」からだ。
鋏というモノは、便利なモノである。紐や糸のカット、あるいは紙や布
を裁断するコトで、自由な造形をするコトだってできる。
だが、刃物であるが故、使い方をひとつ誤れば人間を危険な目に遭わす
コトだってできる。−そう、殺すコトだってできてしまうのだ。それ故、
自制心をもって扱う必要がある(鋏に限らず刃物全部がそうだが)。
便利なツールは凶器と表裏一体、−まさに「2ちゃんねる」にも当ては
まらないだろうか。ネット世界の鋏だ。
常識のある人間は、「それ」を正しく有益に使う。
だが、キチガイの手に渡れば、「それ」は人を傷つけ、あるいは殺める
ための手段となってしまう。
某コピペネタではないが、
『諸刃の剣。素人にはおすすめできない』
を地で行くモノなのだ。
それでも、今夜もまた多くの人間が、同じコトをネット上で繰り返して
いる。
それを目にする度に、俺は「自己責任」という言葉の意味をつくづく思
い知らされる。
ある意味では、その「自己責任」というモノを学ぶ上において「2ちゃ
んねる」ほど最上の教材はないと言えるのかもしれない。